2022 Fiscal Year Research-status Report
粒子層内の熱・物質輸送現象に対する微視的シミュレーション手法の高度化と応用
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22K12061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥生 大祐 京都大学, 学術情報メディアセンター, 助教 (60772572)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱・物質輸送 / 固液相変化 / 流体・固体熱連成 / 直交格子法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2022年度は,研究計画にしたがい以下の2項目について検討した.
(1) Fractional Step法と音速抑制法を用いた低マッハ数圧縮性流れの数値計算手法:課題代表者らがこれまでに検討してきたFractional Step法と音速抑制法を用いた数値計算手法では,計算中に音速を人工的に抑制することで音速に基づくCourant-Friedrichs-Lewy条件を緩和し,流体の圧縮性を考慮しつつ低マッハ数の非等温流れを完全陽的に計算可能である.本年度は2次元キャビティ流れとキャビティ内自然対流問題に本手法を適用し,音速を抑制しない場合の計算結果や既往の計算結果と比較した.その結果,上部壁面が水平方向に動くことで流れが駆動されるキャビティ流れにおいては,音速を抑制した影響が流速や圧力に比べて密度や温度に現れやすく,音速を過剰に抑制した場合には流れのマッハ数が十分小さいにも関わらず密度や温度の変化が無視できなくなる可能性が示唆された.また,左右の壁面間に大きな温度差(720 K) を与えたキャビティ内自然対流の計算では,音速の抑制により温度変化の大きな箇所での圧力変化を過小評価する傾向があるものの,流速,温度,密度への影響は圧力に比べて非常に小さく,音速抑制法が計算を高速化する上で有効な手法であることを確認した.
(2) 直交格子を用いた自然対流を伴う水の凍結および氷の融解の数値計算手法:課題代表者らがこれまでに検討してきた数値計算手法について,水の凍結と氷の融解を同時に扱うべく,固液界面におけるステファン条件を用いた凍結層厚さの計算手法に改良を加えた.改良した手法を用いて自然対流を伴う正方形キャビティ内の凍結・融解問題について数値実験を行い,対流による温度分布変化に応じて計算領域内で水の凍結と氷の融解が同時に生じるような複雑な問題への適用性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低マッハ数圧縮性流れの計算手法については,今後の研究を進めていく上で重要となる手法の基本的な特性を初年度内に確認することができた.また,凍結・融解の計算手法については,本年度に行った改良によってより広範な温度範囲の問題へ適用可能となり,計算手法の基盤は概ね整ったと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Fractional Step法と音速抑制法を用いた低マッハ数圧縮性流れの数値計算手法 本年度に得られた成果を踏まえ,固体との連成計算に適用した際に音速の抑制が計算結果に与える影響を詳細に検討する.その際,温度や流速だけでなく,固体に作用する流体力や適切な計算格子サイズに与える影響についても明らかにする.
(2) 直交格子を用いた自然対流を伴う水の凍結および氷の融解の数値計算手法 氷とは別の相変化しない粒子 (例えば砂や礫粒子など) を加え,水-氷-粒子の3相から構成される多相場へ適用すべく検討を進める.
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Causes of Carryover |
使用していたスーパーコンピュータシステムについて,年度途中に予定されていたリプレイスのための停止期間が想定よりも長かったため,その分の利用負担金が不要となり次年度使用額が発生した.研究をさらに加速させるために,次年度使用額は計算資源の追加に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)