2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of hierarchical simulation system based on large-scale quantum chemical calculations
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22K12064
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西村 好史 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (10778103)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 計算化学 / 量子化学 / 分子動力学 / 分子シミュレーション / 並列計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模量子化学計算に基づく階層的シミュレーションシステムを構築し、ナノスケール分子集合体への応用を通して大規模モデルを用いたシミュレーションにおける量子的取り扱いの有効性の実証を目指す。階層的シミュレーションシステム構築のために、所属研究室で開発された大規模量子化学計算プログラムDCDFTBMDの高度化や補助ユーティリティ整備を行う。ナノスケール分子集合体への応用として、ナフィオン中のプロトン伝導や水溶性ポリマーの熱分解プロセスに対する化学反応シミュレーションの実行と解析を行う。2022年度は階層的シミュレーションシステムの構築に不可欠となる機能の追加をプログラムに施す。 多数の分子種からなる系で進行する未知の反応性イベントのサンプリングを加速するナノリアクター分子動力学(NMD)法をDCDFTBMDプログラムに実装した。さらに、活性な分子種のみ加速効果が選択的に作用されるようNMD法のアルゴリズムを拡張した。これにより、従来のNMD法では困難であった溶液系における化学反応イベントの効果的なサンプリングが可能となった。 DCDFTBMDと他の計算プログラムを接続するためのインターフェース開発を行い、合計5種類のプログラムとの接続を可能とした。これにより、量子化学計算と古典力場計算を組み合わせるハイブリッド計算や、より効果的な部分構造最適化およびポテンシャルエネルギー面探索、半古典動力学など幅広いシミュレーションについてDCDFTBMDを駆使した大規模量子化学計算手法の適用の見通しがたった。また、開発したインターフェースの応用事例として、従来数百原子以下の取り扱いがなされてきた水溶液系に対する核の量子効果を考慮したシミュレーションを数千原子規模の大規模モデルを用いて実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は階層的シミュレーションシステムの構築に不可欠となる要素部品の開発を予定していたため、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は階層的シミュレーションシステムの完成に向けて、プリポスト処理を効率化するための補助ユーティリティ開発と前年度までに開発したプログラムとの一体化を図る。また、構築したシステムを用いてナフィオン中のプロトン伝導に関する応用計算に着手する。プロトンダイナミクスの追跡と含水率依存性の解析により、プロトン伝導機構の分子レベルでの詳細解明を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度は階層的シミュレーションシステム構築のためのプログラム開発・インターフェース拡充と成果の論文化作業に当初の想定以上に注力する必要が生じた。最終的に最低限の機能を導入したプログラムの準備までは完了したが、計画していた大型計算機を利用しての動作検証にまで至らなかった。2023年度からは応用計算を開始し多くの計算資源が必要となることから、未使用分の大半を引き続き大型計算機利用料金に充当する予定である。
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Research Products
(9 results)