2022 Fiscal Year Research-status Report
高時空間分解能・高効率・省スペースの分光BRDF計測システムの開発
Project/Area Number |
22K12086
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
来海 暁 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (30312987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 元紀 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (00304155)
西 省吾 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (70411478)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分光BRDF計測 / 時間相関カメラ / 楕円鏡 / 球面調和関数 / フーリエ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,前年度までの課題(基盤研究(B)(一般)19H04143)で提案した分光BRDF計測システムを,高時空間分解能・高効率・省スペースで実現することである.本システムは時間相関カメラ,DLPモジュール,高速波長可変光源,および楕円鏡から構成され,このうち楕円鏡は光学系に適した形状のものを作製する必要がある.今年度の実績は以下の通りである. 1)楕円鏡の改良:前課題では,金属光造形先端加工機を用いてステンレス粉末から楕円鏡を作製してきたが,表面に微小な欠陥が多数生じ,そのパターンが計測光学系において計測対象のBRDFの分布に重畳することが問題となっていた.今年度は,5軸マシニングセンタを用いて金型用金属ブロックを切削するという方法に変更して楕円鏡を作製した.この変更により,表面に微小な欠陥が多数生じる問題を解消することができた. 2)高時空間分解能・高効率・省スペース化に向けた検討:本システムでは,高速波長可変光源において波長に線形な位相シフトを与えた正弦波変調照明を発生させ,それをDLPモジュール上で方位角に線形な位相シフトを与えた球面調和関数としてさらに空間変調し,計測対象に投射する.DLPモジュールは高速変調特性を最大限に発揮させるため単体で利用しなければならず,DLPモジュールまでの入射光学系は自前で設計する必要がある.さらに,照明光を効率的に利用するため,入射光学系は小さく密閉されたモジュール構造とする必要がある.この設計のため,今年度は光学設計ソフトウェア(Zemax OpticStudio/OpticsBuilder)を購入した.また,計測対象はピアノ線により楕円鏡の焦点上に位置するように設置しているが,焦点からのわずかな位置ずれがBRDF計測に大きく影響することも判明した.そこで,この位置ずれを軽減するための計測対象の位置調整機構も提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗が遅れている理由は,形状と表面仕上げが理想的な楕円鏡を作製するのに時間がかかっていることによる.円安が進んだことにより,今年度購入した光学設計ソフトウェアの費用は当初の予定を大幅に超え,今年度の予算のほとんどを占めることになった.このため,楕円鏡の作製を外部業者に発注する余地がなくなり,研究代表者らの所属機関に設置の加工機械を用いて自前で作製しなければならなくなった.加工機械は発注先候補の外部企業ほどの性能を有しておらず,さらに授業期間は授業が優先され使用時間が限定されるなど,制約が大きかった.また,作製後の研磨は手作業で行っているが,研磨剤の粒度を段階的に細かくし,状態を確認しながら少しずつ作業を進めなければならなかったため,月単位の作業期間を要した.手作業で可能な上限の段階に到達したのはようやく今年度末になってであり,それ以上の研磨精度を追求するには外部業者に依頼するほかなく,自前での楕円鏡の作製は限界を迎えた状態である.一方,楕円鏡の作製に多くの時間を割いたことから,入射光学系モジュールの設計も進捗が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず今年度作製した楕円鏡を用いて可能な限りの性能の検証を行い,成果を口頭発表するとともに,内容次第では原著論文の執筆に漕ぎつけたい.入射光学系モジュールは設計に至っていないが,照明光投影レンズと半透鏡を用いた現在の入射光学系でも,照明光の損失は避けられないもののBRDFはある程度まで可能となる見通しが得られている.楕円鏡の形状や表面仕上げの不具合は時間相関カメラからの出力画像に積の形で分布的に重畳するため,この分布をあらかじめ調べておき実際の計測結果を較正する手法を確立する. 一方,本課題に至って新たに顕在化した問題として,ピアノ線で保持した計測対象の楕円鏡焦点からの位置ずれによるBRDF計測への影響がある.計測対象には楕円鏡で反射した入射照明光が球面調和関数状の空間強度分布を伴って入射し,それが対象から楕円鏡へと反射することにより,BRDFを球面調和関数で展開した係数が反射方向ごとの分布として時間相関カメラ上で計測される.このカメラ上での反射光分布は,計測対象が焦点から光軸に沿ってわずかに(サブmm程度で)ずれただけで大きく変化するため,計測対象を取り換えるとその都度対象を最適位置に調整する必要の生じることが判明した.この位置調整のために,これまでピアノ線を楕円鏡に直接固定していたのに代わり,今年度は楕円鏡とは独立に光軸方向に移動できる機構を考案したので,今後はそれを実際に製作し,計測精度の向上を図る. さらに,これまでは専ら楕円鏡の集光光学系の実現に注力していたため,高速波長可変光源には波長線形位相シフトによる正弦波変調を施してこなかったが,楕円鏡による計測性能の評価を始めるのに伴い,今後は正弦波変調を導入し,BRDFのフーリエ展開係数の計測にも着手する.
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Causes of Carryover |
今年度の予算は大半を光学設計ソフトウェアの購入に充てた.一方,本課題のうち主要な部分課題である楕円鏡の作製を外部業者に発注するには,予算の残額は少なすぎた.このため残額は次年度に回すことにし,楕円鏡の作製をはじめ,光学部品や計測対象物体などの用途に有効に活用する計画である.
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Research Products
(4 results)