2022 Fiscal Year Research-status Report
Comfotable viewing condition for eyepiece-type image display devices
Project/Area Number |
22K12111
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
矢野 澄男 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (30466239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 修一 崇城大学, 情報学部, 教授 (30211824)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 接眼型ディスプレイ / 表示画角 / 視距離 / 視野制限 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘッドマウントディスプレイに代表されるVR等で用いられる接眼型ディスプレイの基礎的な表示条件の一つである表示画角に関して必要とされる画角を主観評価実験により検討を行った. 接眼型表示ディスプレイの基本的な特性を表示画像以外の視野を制限し,かつ,頭部運動等を許容し,画像が表示されている空間を切り取り,表示する方法であると捉え実験を行った.画像の表示空間は,正面6.4m×6m,左右方向1.7mのコ字型のスクリーンである.接眼型ディスプレイを模した視野制限眼鏡は,左眼は黒パネル,右眼はアパーチャである.画像1920×1200ドットのうち,正面に1250×1150ドットが表示されている.画像は,自然画像が3種,動き画像が2種である.動き画像はランダムドットであり,ドットが左から右,および,下から上に一定速度で移動する.視距離は,2m,4m,6mである.被験者は,表示画像に対してアパーチャのサイズを手動で調整し,必要とされる好ましいサイズとする.なお,評価に伴う観視では頭部の運動は許容する. 実験の結果,必要とされる好ましい画角は2mで50度,4mで40度,6mで20度程度である.各静止画像,および,動き画像で得られた表示画角には大きな差異は見られなかった.分散分析の結果,表示画角には統計的な有意差が認められた.表示画像のコンテンツの影響を知るために,顕著性マップを求めた.その結果,いずれの画像でも特定位置に注視点の検出は見られなかった.このことから,画像コンテンツの特定部分に着目して,被験者は必要とされる好ましい表示画角を求めたものでないと推測される. これらの結果は,従来のテレビジョン画像に関して求められてきた必要とされる表示画角とは大きな違いがあり,接眼型表示ディスプレイでの特有の特性と見込まれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接眼型表示ディスプレイの基本的な特性を表示画像以外の視野を制限し,かつ,頭部運動等を許容し,画像が表示されている空間を切り取り,表示する方法であると捉え,必要とされる基本的な要件を実験的に検討している. 現在までに,基本となる画像の表示画角の検討を行った.実験では,既に設置されている大画面,並びに,投影プロジェクターの設備を利用して,接眼型表示ディスプレイを模擬した視野制限が可能な眼鏡を試作し,単眼ではあるものの必要とされる好ましい表示画角を見出した.これらの画角は,従来のテレビジョン画像で検討されてきた表示画角とは大きな違いがあり,視野制限,すなわち,画像のみ空間に表示する画像表示システムでの特性とみなすことが可能と考えている. 今回の実験では,単眼での観視,評価実験となったが,両眼であることが望ましい.時間的な制約をも含め単眼での実験とのならざるを得ない点があったことはやや不足とするところである. 今後は,さらに頭部運動の許容性の影響,また,虚像表示の特性等の接眼型表示ディスプレイの基本的な特性を明らかにしていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
接眼型表示ディスプレイの基本的な特性を表示画像以外の視野を制限し,かつ,頭部運動等を許容し,画像が表示されている空間を切り取り,表示する方法であると捉え,必要とされる基本的な要件を実験的に検討している. 今後は,まず,視野制限下での頭部運動の動きを測定,評価を行う.これまでに,一定の視距離での必要とされる好ましい表示画角は把握しているので,これらに基づき視野制限を行い,表示画像観視時の頭部運動を3軸方向・回転の6パラメータで計測する.画像は,静止画像として画角表示に用いた3つの自然画像,および,2つの連続画像を用いる.画像のコンテンツに関しては,顕著性マップ,および,連続画像での特徴点対応のユークリッド距離等を考慮しつつ検討する. 次に,接眼型ディスプレイの特徴である虚像に対するピント調節機能を測定,評価する.一つは,表示画像に対するピント位置を明らかにする.すなわち,接眼型ディスプレイでは実像を虚像として光学系で拡大表示するが,ピント位置がどのように収束するかを特に画像切り替え時の過渡応答を測定,評価する.他の一つは,視野制限下でのピントの収束速度,安定性について検討を行う.これらを通じて,接眼型表示ディスプレイの基本的な特性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
今年度予算の残余の大きな理由は,高精細度プロジェクター,および,大画面スクリーンの購入,設置を控えたことによる.旅費では,ハイブリッド開催の研究会にネットミーティングの形態で参加したことが大きい.当初は,プロジェクター,スクリーンを購入予定であったが,種々の検討結果,共同研究先である崇城大学のIoT・AIセンター内の大画面表示装置の使用を願い出ると,IoT・AIセンターの活動に支障のない範囲内であれば,事情を勘案していただき,使用許可となった.このため,画像表示にかかわる装置の購入を控えた.また,現状,研究会レベルではハイブリッド開催も多く,今回はネットミーティングで参加し,宿泊費・交通費が抑制された. 予算は今後の研究実施での実験装置の充実に使いたい.一つは計算機性能の向上である.これにより,時間的に効率的な実験の実施を図る.他の一つは,大容量の記録装置を購入し,画像ファイルの記録,また,実験データの共有化を図る.これらを通じて,遠隔地間での共同研究の円滑な実験実施を目指す.また,ピント調節の測定のための光学部材の購入をおこなう.接眼型表示ディスプレイでの立体画像表示では輻輳・調節の乖離がすでに報告されているが,視野制限を伴う虚像に対する研究例は見られない.このため,ピント調節を測定するためには,いくばくかの試行錯誤が見込まれ,光学素子の購入をおこなう.
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