2022 Fiscal Year Research-status Report
MIDS法と非線形変換器を用いた電極と変換素材のみのマトリクス・スピーカアレイ
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22K12137
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
武岡 成人 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (30514468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多入力型ΔΣ変調器 / MIDS / スピーカアレイ / 波面合成法 / 超多チャンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,我々が提案している多入力型ΔΣ(MIDS)変調法と,入力信号に対して非線形な出力を行うトランスデューサとを組み合わせることで,共通の電極とトランスデューサ素材のみから構成されながらも個別に制御されるスピーカアレイを実現しようというものである。本年度は理論・実装両面から基礎的検討を行った。 ・サーモホンに着目した乗算出力スピーカの検討 本研究のキーテクノロジーであるMIDS変調法においては,出力段を駆動信号対の乗算結果に比例した出力とする特徴があり,トランスデューサ部分に何らかの方法で乗算機構を施す必要があった。そこで本年度はサーモホンと呼ばれる温度変化を原理とする電気音響変換器に着目し,再生原理自体に乗算構造を持たせる手法について検討を加えた。サーモホンは二乗波が出力されることが知られており,通常は歪が問題となる。一方提案手法は各端子間には逆相ではなく異なる信号が加わり,それら電位差の二乗には乗算項が含まれること,またMIDS変調法では1bit量子化が可能であるという特徴があり,1bit信号で駆動することで乗算項以外が理想的には直流となることを示した。すなわち,MIDS変調信号で駆動することで,サーモホンが乗算出力スピーカと見されることを確認した。 ・CNTウェブを用いた基礎実験 極めて高い熱伝導率により,サーモホンの素材として着目されているカーボンナノチューブ(CNT)を用いて上記提案法の基礎実験を行った。具体的には格子状に設置した共通電極と支持材を兼ねるアルミ板と真鍮の棒に4cm四方のCNTウェブを接着することで,4×4・16chのサーモホンアレイを作成した。試作機を用いて縦横4本・計8本の制御信号により各チャンネルを個別制御する実験を行った。チャンネル毎に異なる周波数の正弦波をアサインし出力波面を観察することで同時かつ個別に制御されている様子を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標である共通電極と素材のみで構成する多チャンネル駆動法の確立に向けて,本年度は電気音響変換原理の選択と,それらを乗算出力素子として扱う原理の検討,CNTを用いた試作実験を行った。研究遂行上の位置づけとしては基礎理論を提案し試作実験を行うことができたことで,本提案手法に対するサーモホンというアプローチの有効性,1bit信号と組み合わせた乗算出力スピーカとしての動作原理の実効性を確認できた。これによりプロジェクト全体で実現しようとしているシステムについて基礎原理を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は駆動線が共通でありながら各点を独立に制御する新しいアレイ駆動法に,非線形な再生原理を持つトランスデューサを導入することで共通電極と素材のみで制御されるスピーカアレイを実現しようというものである。2022年度の検討により,本プロジェクトで用いる電気音響変換原理と,それらに対する提案する変調信号を用いた駆動法の基礎理論を構築することができた。そこで2023年度以降は高密度サーモホンアレイの実装と,マイクロホンアレイとの併用による音場伝送を検討・試作し,評価する。サーモホンアレイの実装について,基礎実験にて用いたCNTウェブは極めて高い熱伝導率を有するが,目的である高密度・多チャンネルという観点からは加工のしやすさに課題があった。そこでサーモホンの素材として若干劣ると考えられるもののCNT分散液を用いた実装手法を検討し,プリンタブルな構成とすることで実用性の高い高密度アレイの実現を目指す。また,高密度マイクロホンアレイと組み合わせることによる波面の伝送実験を試みる。マイクロホンアレイにはサイズと実装の容易さからMEMSマイクロホンを用いる予定である。
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Causes of Carryover |
論文の投稿費用として予定していたが,年度内に間に合わなかったことから次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせて,主としてサーモホン試作機の製作費として使用し,また成果報告としての論文投稿費,学会参加費にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)