2022 Fiscal Year Research-status Report
Understanding Laughter Experience through algebraic structure of Manzai
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22K12231
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
郡司 幸夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40192570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 恭子 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (00725343)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 笑い / 束論 / 量子論 / あるあるネタ / 漫才 |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる漫才の解析にとどまらず、一人でする話芸の「あるあるネタ」や、複数人のコントにまで、お笑いのテーマを拡大し、研究を進めた。「あるあるネタ」では、オンラインでのアンケート形式によるデータ収集を行い、193名の被験者に、面白さ、主観的リアリティ(それが自分で経験されると思われる程度)、客観的リアリティ(自分以外の人一般が経験するだろうと予想される程度)を5段階で評価してもらった。これを一次実験とした。さらに面白さにヒステリシスや文脈依存性があるか否かを調べるため、一次実験での面白さ評価で順番づけられた「ネタ」を面白い順に順次、鑑賞する場合(順方向鑑賞)と、面白くない順に鑑賞する場合(逆方向鑑賞)の各々で、各ネタに面白さの評価を行い、順方向鑑賞と逆方向鑑賞とで、各ネタの面白さが変化するかを調べた。その結果、一次実験では、主観的リアリティと客観的リアリティの距離が近いほど面白さの強度が高くなるという結果が得られた。ネタは、無意識に想定されながら、顕在化していなかったことでネタとなるため、ここには、「あるあるネタ」の提示による意識的喚起と、他者との共感(主観・客観的リアリティの一致)により面白さが現れるとの結論が得られた。また二次実験でのヒステリシス効果も存在することが示され、ネタの文脈依存性も明らかとなった。 漫才に関しては漫才ネタのデータを増やし、ネタ分析を以下のように行った。すなわち、話言葉時系列における過去との相関、二項関係の作成、そこからのラフセット束制作である。これにより、広範なネタから量子論理が得られ、またほとんどのネタが、ブール代数を部分束としながら、それが重複を許し、並列した束構造によって記述できることを示していた。これらの基礎的研究に関して認知に関する束が一般的に量子論となることや、それが臨界性と深く関与していることが論文化された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、youtubeなどから漫才の話言葉データを収集し、束論に関して解析を行うだけの予定であった。 これに対して、第一に一人話芸である「あるあるネタ」に関するアンケート調査をネット上で行い、そのデータ解析から「あるあるネタ」の基本構造が明らかになったことは、新たな展開の一つである。ここでは、主観的リアリティと客観的リアリティを共に肯定し、両者を接近させることで笑いが生まれるという結果が得られたが、申請者が提案している「天然知能」的構造から推定するなら、より高度な笑いは、共に肯定される主観的リアリティと客観的リアリティを、突き放し、それらを皮相な、括弧付きのリアリティに過ぎないとして、共に否定する点にこそ生まれると考えられる。そのような笑いが「あるあるネタ」にもあるかという展開が新たに拓けたことになる。 また主観的リアリティと客観的リアリティを共に肯定しながら、同時に共に否定するという複雑で動的な文脈を組み込んで、むしろ新しい笑いが作れるという可能性を、コントの制作によって実現しようという展開も現れ、これについても現在進めている。これは実際、コントの脚本を制作し、演じることでその面白さを評価しようというもので、その評価方法についても現在考案中である。 以上のように、既存のお笑いデータを解析し、その論理構造を評価するというアプローチと、お笑い生成に関するモデルを構築し、そこから実際にお笑いを作ってみるというアプローチを立ち上げることができたため、研究が重曹的で厚みを持ったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、当初の計画通り、既存の漫才データの「話言葉 時系列」から二項関係を構成し、そこから束論に関する解析を行う。同時に、漫才ネタに関する主観的面白さと客観的面白さの肯定と否定とが共立している可能性についても二項関係を用いて解析し、ここから得られる束の構造も解析する予定である。この解析方法は、当初想定されていなかったが、「現在までの進捗状況」で述べたように、「あるあるネタ」の解析を通して得られたものである。 第二にその、「あるあるネタ」に関して、主観的リアリティと客観的リアリティを共に肯定しながら、同時に共に否定するという複雑で動的な文脈があるか否かを評価するためのアンケートを考案し、実施する予定である。これによって、哲学者「九鬼周造」が唱える「イキの構造」と同型の構造が日本の笑いの中にあるか否かを数理的に議論する道が開けると考えている。 第三に、主観的リアリティと客観的リアリティを共に肯定しながら、同時に共に否定するという複雑で動的な文脈を実装したコントを構成し、それによって高度な笑いが得られるどうか、コントを実演し、鑑賞者に評価させる実験を行う。 以上3つのテーマ、漫才、あるあるネタ、コントを用いて、データから推察する帰納的アプローチと、構成し、実装する演繹的アプローチの両面から研究を進める予定である。 笑いと量子論の関係は、スウェーデンやベルギーの研究者によって言及されているが、現実のデータが解析されることや現実的なモデルが与えられてはいない。その意味で、これらの研究を進め、英語の論文を執筆し、認知科学などの外国専門誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
大学の学内予算などで研究の実行を十分賄えたため、次年度にオープンアクセスの論文を書いて投稿する予算の確保のため、次年度に繰り越された
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[Journal Article] Simulation of foraging behavior using a decision-making agent with Bayesian and inverse Bayesian inference: Temporal correlations and power laws in displacement patterns.2022
Author(s)
Shinohara, S., Okamoto, H., Manome, M., Gunji, Y.P., Nakajima, Y., Moriyama, T. & Ung-il, C.
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Journal Title
Chaos, Solitons & Fractals
Volume: 157
Pages: 111976
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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