2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒトにおけるレヴィウォークの機能的利点と神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K12235
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 真人 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (60758027)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 探索行動 / レヴィウォーク / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ランダムウォークの一種であるレヴィウォークは、特徴的なスケールをもたない裾の重い分布(スケールフリーな分布)に従う直線運動を示す。その性質が、餌探索や情報探索における利点をもたらすことが報告されてきた。本研究では、特にヒトにおけるレヴィウォークの機能的利点とそのメカニズムを明らかにすることを目的として掲げた。本年度は、シミュレーションと数理モデルを用い、レヴィウォークの長期間の進化的な動態を理解するために適応度の幾何平均に基づいてその進化的利点を解析した。その結果、複雑で予測ができない変動環境下では、短い時間スケールではレヴィウォークは劣るものの、長い時間スケールではレヴィウォークは優れており、自然選択の結果として進化しうることを明らかにした。これは、人を含めた多くの生物においてレヴィウォークが広く観察される事実に対し、その理屈を与える結果が得られたといえる。特徴的なスケールをもたない裾の重い分布が、変動する環境の分布に対し、両がけ(bet-hedging)戦略としての役割を果たすことが考えられ、そういった分布が人の認知や行動において重要な役割を果たすことが期待される。そこで今後、情報理論を用いて、スケールフリーの分布が予測不可能で変動する外界に対し最もうまく振る舞うことが可能になることを数理的に解析する予定である。さらに脳のダイナミクスの解析からレヴィウォークの生成するメカニズムを探ることを次年度以降に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複雑で予測ができない変動環境下では、短い時間スケールではレヴィウォークは劣るものの、長い時間スケールではレヴィウォークは優れており、自然選択の結果として進化しうることを明らかにでき、当初の目標であったレヴィウォークの機能的利点の解明という目標を達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
レヴィウォーク分が人の認知や行動において重要な役割を果たすことを当初から仮説を立てており、今後、情報理論を用いて、スケールフリーの分布が予測不可能で変動する環境に対処する仕組みを解明する。さらに脳のダイナミクスを計測し、レヴィウォークの生成メカニズムを探る。
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Causes of Carryover |
実験の計画が変更になったため、次年度以降の実験費で用いる。
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