2023 Fiscal Year Research-status Report
養育中枢で発現するカルシトニン受容体は出産に伴う”仔の価値”の上昇に関与するか
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22K12236
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
根本 千尋 東京工業大学, 生命理工学院, 研究員 (10647506)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 養育行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の仔は親の養育なしには生存できない。一方、親は自己の身の安全や欲求と仔の養育とを天秤にかけた行動選択を迫られる。我々は高リスク環境下(高架式十字迷路上)での養育行動が母親に特有であり、その維持には内側視索前野MPOAのカルシトニン受容体(Calcr)が必要であることを明らかにした。 当初,、この結果を基に実験をすすめる計画であったが、所属研究室の異動に伴い、高架式十字迷路が使用できなくなったため、代替としてパーティションテストを採用し、妊娠および出産に伴う仔への執着の変化を検証した。 パーテーションテストでは、成獣メスマウス(母または未経産)と仔マウスを柵越しに5時間分離し、成獣メスマウスの柵に対する抵抗行動(仔に近づこうとする行動)とその潜時を定量化した。その結果、ほとんどの母マウスは実験終了時まで抵抗行動を続けたが、未経産メスマウスは2時間以内に抵抗を放棄した。子育て経験が結果に及ぼす影響を考慮し、仔マウスとの同居を2週間経験した未経産メスマウスでも同様の実験を実施したが、仔との同居経験は結果に影響を与えなかった。これら結果は、仔への執着の上昇が妊娠および出産に伴う生理学的変化に起因するものであることを示唆する。 次に、実験中に活性化する脳部位を神経活性化マーカー(c-Fos)を用いて検証した。その結果、母個体で未経産メスマウスに比べて、c-Fos発現細胞の密度が高い脳領域を複数見出した。この脳領域の一部は妊娠出産に伴い、MPOAのCalcr発現細胞への求心性投射が上昇した脳部位と共通していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属の変更に伴い高架式十字迷路が使用できなくなったため、代替えの実験系で実験せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度立ち上げた実験系による実験を進めるとともに、より詳細な組織学的研究に取り組む。
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Causes of Carryover |
研究室の異動に伴い実験の計画に変更があったため使用額に変更が生じたが、今年度は研究に必要な機器の整備(劣化した顕微鏡光源の買い替えなど)、昨年度購入予定であった試薬・ウイルスの購入に使用したい。
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