2022 Fiscal Year Research-status Report
抗体医薬標的におけるミスセンスレアバリアントの結合親和性変化を評価する手法の確立
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22K12250
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
土方 敦司 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (80415273)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エピトープバリアント / タンパク質複合体 / 抗体医薬品 / レアバリアント / 結合親和性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム解析技術の普及によって、ゲノム医療など個人のゲノム配列解析に基づく治療法の選択などが可能となりつつある。しかし、個人ゲノムに見られるごく頻度の低いレアバリアントの意義については不明な点が多い。本研究は、「個人ゲノム上に見られるレアバリアントはどのように表現型と結びついているか?」の問いに対して、抗体医薬品の標的タンパク質に焦点を当て、標的タンパク質に生じたミスセンスレアバリアントがその薬効に対して、どのような影響を与えうるかを推定可能な手法の開発を目指すものである。 本年度は、まず既知のヒト抗体医薬品とその標的タンパク質に関するデータを、公的データベースなどを用いて収集を行なった。その結果、既存の528種の抗体医薬品とそれらが標的とする185種のヒトタンパク質を取得し、その結果、398種類のユニークな抗体―ヒト標的タンパク質のリストを得た。これらの抗体―標的ペアについて、立体構造の有無を調べたところ、55種類(約14%)のペアについてその立体構造が実験的に決定されていることがわかった。次に、これらの構造既知の標的タンパク質上に、健常者にみられる、アレル頻度0.1%以上のミスセンスバリアントのデータをマッピングしたところ、85種類のミスセンスバリアントが複合体構造上にマップされ、うち7バリアント(約8%)が複合体の相互作用面に位置することがわかった。これらのうち、2つは抗体医薬品の結合親和性に影響を与えることが知られているものであったが、残り5つについては報告のないものであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた実施項目は概ね達成できたため、進捗状況をこのように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のデータ解析から、ヒトタンパク質を標的とする抗体医薬品とその標的タンパク質との立体構造複合体が決まっているケースはまだ少ないことがわかった。また、本年度は比較的頻度の高いバリアントに着目したため解析対象のバリアントデータが限定されていた。今後の方針としては、抗体―標的タンパク質の構造情報を増やすために、近年多く決定されているSARS-CoV-2スパイクタンパク質とその中和抗体との複合体構造も解析対象とする予定である。また、抗体医薬品によっては、アミノ酸配列は公開されているケースも多いことがわかったため、その立体構造および標的タンパク質との複合体構造について、AlphaFoldなど立体構造を高精度で予測することが期待できる機械学習技術を取り入れて予測を試みる予定である。また、ゲノムバリアントについても、より低頻度のミスセンスバリアントを解析対象とすることで、解析データを増やす予定である。これらの解析を通して、ゲノムバリアントと結合親和性の関連性の詳細を明らかにする。
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Causes of Carryover |
端数をあえて使い切ることをしなかったため。今年度購入予定の消耗品への使用に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)