2022 Fiscal Year Research-status Report
干潟環境中での多環芳香族炭化水素の高濃度濃縮及び高速分解機構の解明
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22K12348
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
齋藤 敦子 東邦大学, 理学部, 教授 (50424718)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 還元有機泥 / 多環芳香族炭化水素 / 砂泥質 / 安定同位体比 / 物質循環 / ペリレン |
Outline of Annual Research Achievements |
養老川河口干潟に点在する還元有機泥(黒色で粘性の高い底質)中に見られる高濃度のPAHsの起源を明らかにするために、干潟砂泥質及び還元有機泥についてPAHs濃度、粒度、安定同位体比分析を行い、それらの結果を比較した。還元有機泥は、養老川河口干潟全体の底質表層から深層まで広範囲に分布し、砂泥質の4から7 倍高濃度のTotal PAHs(206~370 μg / kg-dry)を含んでいた。目視による観察と粒度分析及び炭素の安定同位体比分析より、還元有機泥は陸上植物由来であることが分かり、養老川上流部から豊富に供給される落葉が、河口の干潟で還元的に分解され生成したと考えられた。また、還元有機泥中には、ペリレン(Pery)が51~101μg/ kg-dryと、砂泥質の約15から30倍高濃度に存在することが分かった。植物片の分解度が高い還元有機泥ほど、Total PAHsに対するPeryの含有率が高くなり、検出されたPeryの多くは、陸上植物の分解過程で還元有機泥中に負荷されたと考えられた。また、低分子量のPAHsであるフェナントレン(Phe)は、植物片の分解度が高いほど低濃度になる傾向が見られた。Pheは植物葉に付着した自動車排ガス等粉塵由来であり、比較的水溶性が高いため、還元泥の生成過程で系外に拡散したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の問いの一つ「落葉が還元有機泥になる過程で、どのように高濃度のPAHsが濃縮されていくのか?」について、ほぼ明らかになってきたと考えられる。また、もう一つの問いである「還元有機泥がイワムシ体内を通過することは、PAHsの高速濃度低下に必須であるか?」についても、現在実験を進めているが、再現性の確認が必要である。これらの結果について、学会発表4件(内招待講演1件)と論文発表1件を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
還元有機泥中の高濃度のPAHsが、主に陸上植物葉に付着した自動車排ガス等粉塵由来であることを更に確かめるために、夏季の台風後河口干潟に流れ着く植物片を採取し、それらの表面に吸着されているPAHs濃度の定量を行う予定である。また、還元泥及びイワムシ糞中でのPAHs濃度の時間変化を調べ、比較を行う予定である。また、これらの結果の国際学会での発表と、論文発表も予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度に開催予定であった国際多毛類学会が、2023年度に延期となり、予定していた旅費が2023年度に繰り越された。2023年度には、当該学会への参加を予定している。
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