2022 Fiscal Year Research-status Report
密度勾配-サイズ分画培養法によるプランクトン食物網のエネルギー輸送の定量評価
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22K12361
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
吉川 尚 東海大学, 海洋学部, 教授 (80399104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗林 留美 静岡大学, 理学部, 准教授 (00343195)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 密度勾配-サイズ分画培養法 / ピコ・ナノ植物プランクトン / 鞭毛虫 / 繊毛虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、培養条件の検討や各分析項目の精度向上を主な目的に実験を行った。2022年10月に、駿河湾の真崎海岸にて表層海水を採取し、プランクトンネットを張った筒を用いて、<5 um(ピコサイズのみ)、<20 um(ピコ及びナノサイズ)、<200 um(ピコ・ナノ及びミクロサイズ)に分画し、2 Lのポリカーボネート製ボトルに分注し、現場水温・太陽光下で培養した。24時間、48時間後に、植物プランクトン組成(光合成色素のHPLC分析とCHEMTAX解析)、微小鞭毛虫と繊毛虫の細胞数(蛍光顕微鏡観察)を調べた。結果、<200 um画分において、繊毛虫と微小鞭毛虫の現存量はどちらも、24時間後までは安定していたが、48時間後には大きく減少していた。また、植物プランクトン各分類群の現存量の変化は、24時間の培養で概ね十分に検出できていた。これらの結果から24時間の培養が適切と判断した。サイズ分画培養法では、植物プランクトンの各分類群がいずれか1つのサイズ画分のみに存在することが前提となる。本実験では、この前提条件を満たし、ほぼ正確に被食速度が推定できたグループ(プラシノ藻、緑藻、渦鞭毛藻等)とそうでないグループ(珪藻等)がみられた。成功例として、プラシノ藻の現存量は、培養開始時、<5 um画分と<200 um画分でほぼ差がみられなかった。よって、プラシノ藻はピコ植物プランクトンであり、その比増殖速度kは、捕食者不在の<5 um画分における現存量の変化として得られた(0.75 d-1)。次いで、<20 um画分における変化から、微小鞭毛虫による被食速度は0.17 d-1と推定された。さらに<200 u画分の変化から、繊毛虫による被食速度を算出したが、0.26 d-1と負の値となり、繊毛虫が微小鞭毛虫を捕食することで、微小鞭毛虫によるプラシノ藻の捕食を抑制している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
使用を予定していたフローサイトメーターが故障し、修理に時間を要したため、実験計画の実施がやや遅れている。ただし、フローサイトメーターで予定していた、ピコ・ナノ植物プランクトン細胞数の計数はできなかったものの、HPLC分析・CHEMTAX解析による植物プランクトン分類群組成の解析は可能だったため、培養時間の検討等を行い、2年目以降の本格的な実験の準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、フローサイトメーターの故障は修理済みで、1年目に基本的な実験条件の検討は済ませ、一部の植物プランクトングループについては被食速度の推定が可能となっている。今後は、さらに実験を積み重ね、推定精度の向上を進める。
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Causes of Carryover |
フローサイトメトリーの故障等により、分析に必要な消耗品の購入量が予定より少なくなる等で、当該年度の使用額が少なくなった。現在は故障は修理済みとなり、次年度に消耗品を購入する予定である。
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