2023 Fiscal Year Research-status Report
東南極氷床における表面質量収支に対する氷床表面地形の影響
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22K12364
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
津滝 俊 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (40706371)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 南極氷床 / 表面質量収支 / UAV |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は第64次南極地域観測隊に越冬隊員として参加し、2022年10月から2024年3月まで南極に滞在した。この間、2022年11月から2023年1月、および2023年11月から2024年1月の二度にわたって南極氷床内陸旅行に参加し、氷床上S16観測拠点からドームふじ基地に至る内陸ルート沿い、およびルート上の雪尺網、雪尺列観測サイトにおいて表面質量収支観測を実施した。 新しく取得したデータと、1990年以降に取得されてきたデータを統合し、1990-2023年にわたる表面質量収支データをまとめた。氷床の表面地形に応じて表面質量収支を3つの領域に区分し、同期間の年々変動および傾向を調べた。その結果、当該調査地域である東ドロンニング・モードランドにおいて、表面質量収支は1990年以降にわずかな増加傾向を示した。また、人工衛星観測や領域気候モデル実験で指摘されていた、2009年および2011年の顕著な氷床質量の増加も本観測で捉えていた。表面質量収支の年々変動幅は大きく、涵養量の増加傾向に関する統計的優位性は見られなかった。 今後は表面質量収支の年々変動と南極振動(Antarctic oscillation)との相関関係を解析する。表面質量収支の大きな増加は大気の川(Atmospheric River)と呼ばれる、南極周辺の海洋からの水蒸気輸送に由来することが先行研究により報告されている。本研究で明らかになった南極氷床内陸における表面質量収支の年々変動のメカニズムを、低緯度地域からの水蒸気輸送と絡めて明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
氷床表面微地形の空間分布の評価については、近赤外レーザー距離計の購入を延期したため、南極氷床上での測量も延期とした。卓越風向と氷床表面微地形の関係においては、気候再解析データの整備、および断面曲率解析を実施している。また、表面質量収支の年々変動に関しても最新のデータまで解析が進んでおり、雪尺を用いた表面質量収支観測およびデータ解析については概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
近赤外レーザー距離計による氷床表面微地形測量の実施が遅延する見込みのため、代替として回転翼UAVによる空中写真撮影、およびSfM解析による数値標高モデルの作成を計画する。
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Causes of Carryover |
近赤外レーザー距離計の購入を翌年度以降に延期した。翌年度以降において、次年度使用額によって近赤外レーザー距離計を購入する予定である。
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[Presentation] 南極ドームふじ周辺における最古級の深層氷床コア掘削地点の選定2023
Author(s)
川村賢二,阿部彩子,藤田秀二,Goginegi Prasad,Braaten David,松岡健一,齋藤冬樹,小長谷貴志,中澤文男,津滝俊,大藪幾美,Rodriguez-Morales Fernando,Paden John,Taylor Drew,Van Liefferinge Brice,Gallet Jean-Charles,Isaksson Elisabeth,Maholdt Geir
Organizer
雪氷研究大会(2023・郡山)
Invited
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[Presentation] 南極ドームふじ氷床の大深部(2400m-最深部)アイスコアシグナルの拡散・平滑化や変形・傾斜等の物理的変質がおよぼす効果の調査2023
Author(s)
藤田秀二,平林幹啓,尾形純,福田かおり,猿谷友孝,東久美子,川村賢二,大藪幾美,中澤文男,飯塚芳徳,大野浩,堀彰,宮本淳,津滝俊,北村享太郎,塚川佳美
Organizer
雪氷研究大会(2023・郡山)
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