2022 Fiscal Year Research-status Report
DNA修復蛋白質53BP1によるCD47クラスター形成とがん細胞貪食機構の解明
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22K12381
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
砂谷 優実 金沢医科大学, 医学部, 講師 (70581057)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞表層にびまん性に存在するCD47は、アポトーシス時には細胞表層の脂質ラフト層でクラスターを形成し限局化する。これにより、CD47はその受容体であるSIRPaと解離し、CD47の貪食阻害効果が解除され、細胞表層に出現したeat-me signalが食細胞の貪食受容体により認識されるようになると考えられている。研究代表者はこれまでに、DNA修復タンパク質53BP1がアポトーシス時にカスパーゼに切断されてC末端領域からなる断片となること、53BP1を欠損したアポトーシス細胞ではCD47のクラスター形成が減少していることを見出した。本研究では、53BP1C末断片化依存性にCD47のクラスター形成が誘導されることをきっかけとして、食細胞がアポトーシス細胞を貪食除去できるようになるのではないかというモデルを立案した。このモデルを立証するため、以下に示す3つの現象の53BP1C末断片化依存性の有無を検証し、53BP1C末断片に含まれる機能ドメインを明らかにしようと試みている。 A. CD47のクラスター形成 B. CD47とSIRPaの結合解離 C. 食細胞によるアポトーシス細胞貪食 令和4年度は、解析に使用する機能ドメイン変異型53BP1C末断片安定発現細胞株の樹立に取り組み、BRCTドメイン以外の既知ドメイン変異型53BP1C末断片発現細胞株を樹立した。そして、CD47のクラスター形成が53BP1C末断片化依存性であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
始めに、53BP1が脂質ラフトでCD47のクラスターを形成させるかの検証実験に用いる、各種ドメイン欠損型の53BP1C1末断片安定発現細胞株の樹立に取り組んだ。作製した各種発現ベクターを53BP1欠損細胞株に導入し、シングルセルクローニングを実施した。現在までに、野生型、Tudor変異型、あるいはUDR変異型53BP1C末断片発現細胞株をそれぞれ数クローンずつ樹立できた。しかしながら、BRCT変異型53BP1C末断片発現細胞株は複数回試したものの得られなかった。そこで手法を変更し、CRISPR/Cas9のゲノム編集によるノックイン技術を用いて細胞のゲノムDNA中の53BP1遺伝子座に存在するBRCTドメインの機能性アミノ酸残基に対して塩基置換変異を導入することで、53BP1BRCT変異細胞株を樹立することを試みた。その結果、高頻度でゲノム編集が起こり、現時点でノックイン候補の細胞が得られている。 細胞株の樹立と並行して、53BP1欠損細胞株を用いてアポトーシス細胞表層におけるCD47のクラスター形成が53BP1C末断片化依存性かどうかを調べた。その結果、アポトーシス刺激後数時間の細胞表層においてCD47のクラスターが形成されたが、このクラスター形成は53BP1欠損細胞株では減少することを確認できた。そして、53BP1欠損によるCD47クラスター形成の減少は、53BP1C末断片化を戻し発現させることで回復する結果を得た。これらの結果から、アポトーシス細胞表層におけるCD47のクラスター形成は、53BP1のC末断片化依存性であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、53BP1BRCT変異細胞株の作製を完了させる。作製した各種変異細胞株を用いて、CD47のクラスター形成を促す機能ドメインを決定する。次に、53BP1C末断片発現細胞株を用いて、CD47とSIRPa結合の解離およびアポトーシス細胞貪食の誘導が53BP1C末断片化依存性で起こることを確認する。さらに、各種変異細胞株を用いて、CD47とSIRPa結合の解離およびアポトーシス細胞貪食の誘導を規定する53BP1C末断片の機能ドメインを明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和4年度内に樹立を予定していたBRCTドメイン変異型53BP1C末断片発現細胞株の作製が困難とわかり、令和4年度途中で代替手法へ切り替えることとなった。そのため、BRCTドメイン変異細胞株樹立にかかる研究費の未使用分を次年度に繰り越した。 また、当初の計画で53BP1C末断片変異細胞株の樹立後に実施を予定していた脂質ラフト層に存在するCD47クラスターの検出も次年度に実施することとなり、脂質ラフト層に存在するCD47クラスターの細胞生物学的および生化学的検出に係る研究費を次年度に繰り越した。
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