2022 Fiscal Year Research-status Report
脱ユビキチン化酵素USP10が支配するDNA修復機構の解明
Project/Area Number |
22K12382
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
宇谷 公一 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60583143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | DNA損傷修復 / 相同組換え修復 / 脱ユビキチン化 / 核小体局在シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は脱ユビキチン化酵素の一つであるUbiquitin Specific Peptidase 10 (USP10) がDNA二重鎖切断(Double Strand Break: DSB)修復、特に相同組換え (Homologous Recombination: HR) 修復に必須の分子であることを見出した。このようなDNA修復の欠陥はがん化、悪性化に寄与することが知られている。そこで、本研究ではDSB修復過程でUSP10により脱ユビキチン化されるタンパク質を同定し、USP10が制御するDNA修復機構を分子レベルで解き明かすことで、USP10をターゲットとしたがん治療の可能性について探索する。 これまでに、USP10-KOのDNA修復異常は、DNA-PKや、その脱リン酸化酵素PP6の阻害や発現抑制によって解消されることを明らかにした。しかしどちらのタンパク質もユビキチン化状況に変化は認められない。そこでUSP10の標的タンパク質を明らかにするため、改良型近接依存性ビオチン標識蛋白質(AirID)とUSP10融合タンパク質を発現させ、USP10タンパク質との相互作用するタンパク質を解析した。その結果、PP6だけでなく、HR修復に必要なSLX4を新規USP10相互作用分子として同定した。またSLX4はUSP10の核小体局在シグナル(Nucleolar Locallization Signal: NoLS)と結合することを見出した。さらに、NoLSを除いた変異型USP10ではDNA修復能は回復しなかった。しかし、SLX4と結合しないUSP36のNoLSと置換したUSP10でもDNA修復能は回復した。このことはNoLSがUSP10の制御するDNA修復能に必須だが、そこに結合するSLX4には依存しないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、AirID-USP10によってDNA修復時に特異的にビオチン化されたタンパク質を網羅的に質量分析法で解析する予定だったが、USP10断片を発現させる方法とDNA修復能を評価する方法を組み合わせることで、絞り込みが効率化できることを示した。この方法によって、今回明らかにした核小体局在シグナルなどのドメインごとの新規機能を明らかにしておくことで、後に行う質量分析解析でUSP10による標的タンパク質の特定を容易にすることができると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、 USP10はPP6を制御しDNA-PKの異常活性化を抑制することで、HR修復経路を促進していると推測した。そのためPP6と結合するUSP10領域の同定を最優先とする。そのためのUSP10断片を発現するためのプラスミドおよび細胞は複数種類準備できている。USP10と結合することが示されたSLX4は、DNA-PKによってリン酸化されることを示唆する結果もあるため、一連のHR修復経路調節と結びついていると考えられる。またUSP10の核小体局在シグナルの重要性が明らかになったが、核小体はrRNAの合成の場であり、近年Fanconi anemiaとの関連が、DNA損傷のシグナルとrRNA合成との関係のもとに注目されている。また、核小体は相分離を起こした構造であり、ストレスを受けた場合にはNucleolar aggressomeと呼ばれる凝集体を形成する。これまでに、USP10は細胞質ではストレス顆粒と呼ばれる相分離した構造を解消する働きが報告されている。そのため、USP10標的タンパク質を同定するという実験計画に加え、USP10の支配する制御機構を理解するためには、DNA損傷修復時のUSP10と核小体の相分離状況を理解することが全体像を理解するためには必要かもしれない。このためにはDNA修復状況に応じたUSP10と標的タンパク質、核小体マーカーによる染色を行い同時に検出することで局在と機能を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定金額であり特筆すべき理由はない。
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Research Products
(1 results)