2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒ素と紫外線の複合曝露による皮膚がん発症機構の解明と予防・治療法開発
Project/Area Number |
22K12393
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢嶋 伊知朗 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80469022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須原 義智 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (30297171)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 紫外線 / ヒ素 / 皮膚がん |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外線とヒ素の複合曝露による皮膚がん発症の分子メカニズム解明と、低分子ペプチドによる皮膚がん発症の予防・治療法開発のため、研究計画に従い、本年度は以下の研究を実施した。 【A-1】複合曝露誘発性皮膚がんの解析 ヒ素及び紫外線を様々な濃度及び時間で曝露し、曝露後の形態変化等を観察した。紫外線曝露はDNAへの直接ダメージを含む様々なストレスを発生させ、細胞増殖停止やアポトーシスを誘発した。ヒ素曝露では、低濃度では細胞増殖活性を上昇させたが、高濃度では細胞増殖停止やアポトーシスを誘発した。複合曝露では、細胞増殖停止やアポトーシスが相乗的に誘発され、DNAダメージの総量も有意な増加も観察された。 【A-2】複合曝露誘発性皮膚がんにおける関連分子発現パターン解析 【A-1】の結果で得られた現象がどのような分子メカニズムによって制御されているのかを明らかにするために、紫外線曝露やヒ素暴露によって変化する様々な分子の発現パターンや活性化(リン酸化等)の変化を解析した。これまでの研究により紫外線暴露によって変化する分子とヒ素曝露によって変化する分子には共通項が存在することが明らかとなっており、本研究で着目した関連分子(p53, p21, ERK, AKT等)の発現量および活性化レベルをウェスタンブロット等の手法により解析したところ、複合曝露はこれらの発現パターンや活性化レベルを、単独曝露と比較して大きく変化させることが明らかとなった。 【B-1】【B-2】【C-1】【C-2】研究計画により、複合曝露誘発性皮膚がんの解析と予防治療法開発研究をスタートさせた。まずはがん関連分子の発現パターンの解析を行い、それらの変化は、今回使用した低分子化合物によって抑制されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り【A-1】【B-1】【C-1】を研究開始時からスタートさせて各研究結果を得ている。半年遅れでスタート予定であった【A-2】【B-2】【C-2】も予定通り開始しており、その成果は研究計画時に立案した仮説を証明しつつある。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに、以下の研究を推進する。 「【A-1】複合曝露誘発性皮膚がんの解析」のより詳細な解析 22年度の解析では、単独曝露・複合曝露各条件による細胞死誘導やDNAダメージ評価を実施した。それらの評価を継続しつつ、発がんリスクの評価も行う。 「【A-2】複合曝露誘発性皮膚がんにおける関連分子発現パターン解析」のより広範囲な検証 22年度の解析では、検証するターゲット分子をp53, p21, ERK, AKT等に絞っていたが、より広範囲の分子に対しても検証を行う。 【B-1】【B-2】【C-1】【C-2】研究計画により、22年度にスタートしている複合曝露誘発性皮膚がんの解析と予防治療法開発研究を加速させる。すでに一部の発がんシステムの構築と予知予防法評価システムが稼働しており、本年度ではそれらのシステムを用いて様々な低分子化合物の評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として計上した金額は当初、細胞実験における曝露試験や発現量解析、予知予防解析等に使用する予定であった。しかし一部の実験は次年度に実施予定である、より広範囲な曝露試験や発現量解析、予知予防解析に必要な実験と共有した実験計画によって実施可能であり、次年度使用を行ったほうが研究計画の完了に有効であり、より効果的に成果を出すためにも有効であることが判明した。 よって本年度購入予定の試薬を来年度実施予定の実験試薬と合わせての購入計画により、次年度使用と決定した。
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Research Products
(1 results)