2023 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子によるエフェロサイトーシス阻害が肺線維化に及ぼす影響の解明
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22K12398
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田部井 陽介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40555083)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / エフェロサイトーシス / 上皮間葉転換 / シグナル伝達経路 / 肺線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ粒子は、幅広い分野での応用が期待される一方、微小物質であるというその形体的特徴から、肺障害を引き起こす等、健康への影響が懸念されている。我々は、これまで、特定のナノ粒子曝露によって、マクロファージによる死細胞のクリアランスが阻害されることを見出した。死細胞のクリアランス阻害は動脈硬化や悪性腫瘍形成を引き起こすとされているが、ナノ粒子による肺障害との関連性は未知であった。そこで、本研究では、複数種類のナノ粒子を用い、肺線維化に関与するとされる上皮間葉転換との関連性を解析することで、ナノ粒子の生体影響を明らかにすることを目的とした。前年度までの結果から、ナノ粒子曝露によって生じる肺線維化は、マクロファージから放出されたIL-1betaにより誘導される上皮間葉転換に起因する可能性が示唆された。本年度は、IL-1betaによる上皮間葉転換の誘導メカニズムに焦点を当て、生化学的な解析を実施した。特に、上皮間葉転換に関わるシグナル伝達経路に関わる解析を進め、IL-1受容体下流のMEK/ERK経路、およびEGF受容体下流のPI3K/AKT経路が活性化され、上皮間葉転換が引き起こされていることを明らかとした。興味深いことに、これらの経路を単独で活性化した場合は上皮間葉転換が誘導されず、両者が協調的に活性化されることが必要との知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-1betaによる上皮間葉転換誘導メカニズムの一端を明らかにしており、当初設定した目標に対しては、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-1betaによる上皮間葉転換の誘導メカニズムの一端を明らかにしたものの、依然として未解明な部分が多い。特に、強力な上皮間葉転換誘導剤であるTGF-beta1により引き起こされる上皮間葉転換とは異なる点も多く、その調節がどのように実行されているか解明する必要がある。そこで、調節経路の解明とともに、in vivo試験を実施し、IL-1betaによる上皮間葉転換の全貌を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究の打ち合わせや意見交換をウェブ会議にて実施したため、当初計上していた会議用の旅費等が次年度使用額として生じた。今年度も、当初実施予定だった研究を推進し、主に上皮間葉転換誘導時における空間的な調節機構に焦点を当てた研究を進める予定である。
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