2022 Fiscal Year Research-status Report
仔稚魚胃内容物を対象としたDNAメタバーコーディング技術に基づく餌資源評価
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22K12403
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅原 亮 広島大学, 環境安全センター, 助教 (40825791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西嶋 渉 広島大学, 環境安全センター, 教授 (20243602)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 稚魚 / DNAメタバーコーディング / 瀬戸内海 / 食性 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の多くの沿岸域では魚類漁獲量の減少が著しい。漁業資源回復のためには一次生産者から魚類までの各栄養段階におけるエネルギーフローの把握が必須であるが、三次生産者である生活史初期段階の稚魚の食性については未解明な部分が多い。稚魚の食性解析では、稚魚自体の種同定および各餌資源の利用割合を把握する必要があるが、体が小さく種同定が困難な稚魚では、従来の検鏡等の手法では詳細な評価が難しい。本研究では、胃内で体の破壊や消化が進んでも種特定が可能なDNAメタバーコーディング技術を用いて、稚魚の餌資源の網羅的な種同定と定量性における従来法における課題を解決することを目的とした。 本研究では、食性の異なるメバル類とマコガレイを選定し、餌資源の網羅的な種同定を試みた。カイアシ類を主に摂餌するメバル類稚魚においては、3つの遺伝子領域を併用したことで、播磨灘における主要カイアシ類を検出できたことから、3領域の併用で十分な食性解析が可能であることがわかった。広島県で採集したマコガレイ稚魚の胃内容物検鏡結果により、底生動物を主に摂餌していることがわかり、同サンプルのDNA分析により、それらを種まで同定することができた。 より簡易な分析手法を確立するために、稚魚から胃内容物だけを摘出するという繊細かつ困難な作業は行わず、稚魚DNAのPCRにおける増幅を阻害するブロッキングプライマー(BP)を設計した。メバル類では、解剖で摘出した胃内容物サンプルについては、BPの使用なしでも全検出DNAに占める稚魚DNAの割合は数%と低かった。さらに解剖さえ不要な簡易手法確立のために、稚魚由来DNAが多量に存在する条件下でBPを用いて餌生物の検出を試みた結果、COI/Leray領域を対象として、胃全部もしくは魚体全体を分析に供しても十分に餌生物由来のDNAを検出し、食性分析が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は対象魚種の選定、稚魚サンプルの採集、主要な餌資源の把握が目的であったが、同大学の冨山准教授のご協力により、3~5月に広島県の竹原市、呉市倉橋町、および八幡川河口域にて対象魚種であるメバル類およびマコガレイの稚魚サンプルを確保することができた。また、稚魚DNAの増幅を阻害するBPの設計開発、および実際の添加実験による阻害効果の確認については順調に終えることができ、複数の遺伝子領域における様々なプライマーを用いた主要餌生物の種の検出率の網羅性も確認することができたため、予定していた目標は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
BPの設計に関しては、現在はCOI/Leray領域のみが対象であるため、令和5年度は引き続き他の遺伝子領域についてもBPを作成する予定である。また、定量化に向けた課題解決について本格的に取り組む。具体的には、内部標準生物として、DNA試料に餌生物としては存在しないアルテミアを添加し、定量化を主に妨げていたと考えられる試料ごとのDNA抽出率の差異や種ごとのPCR増幅効率の差異について補正を行い、DNAリード数からバイオマス量への換算を行う。補正式の作成においては、メバル類およびマコガレイの稚魚の主要な餌であるカイアシ類とベントスについて実施する。また、胃内容物全体におけるバイオマス割合を把握するためには、形態同定ができない消化物についても評価を行う必要があるため、DNA分析における消化物の影響や消化物に含まれる餌生物特定に向けても検討を進める。
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Causes of Carryover |
日本ベントスプランクトン合同大会がオンライン参加となり旅費がなくなったが、日本地球惑星科学連合2022年大会および第57回日本水環境学会に現地参加した。今年度は調査分析補助の謝金の支出が不要となった。また、DNA分析に関わる容器、チップ等、試薬、次世代シーケンサーカートリッジを一部別経費で購入することができたため残額が生じた。繰越分は次年度の学会参加費やDNA分析関連の消耗品購入に充てる。
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Research Products
(1 results)