2022 Fiscal Year Research-status Report
内分泌かく乱物質である臭素系難燃剤の脳神経系に対する影響の解明
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22K12411
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中島 晶 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (20419237)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 難燃剤 / 脳神経系 / 内分泌かく乱物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
テトラブロモビスフェノールA (TBBPA)は世界で最も主要な難燃剤である。ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は近年まで使用されていた難燃剤であるが、その毒性のため日本では2014年に原則製造及び使用が禁止された。TBBPAやHBCDは培養神経細胞において神経細胞死を引き起こすことが報告されているが、その詳細なメカニズムは明らかではない。TBBPAとHBCDにより引き起こされる神経毒性の発現メカニズムを明らかにするため、神経モデル細胞であるPC12細胞にTBBPA及びHBCDを24時間処置し、RNA-seqにより網羅的に遺伝子発現を解析した。発現変動遺伝子の検出及びエンリッチメント解析はiDEP.95により実施した。TBBPA及びHBCDの処置により濃度依存的なPC12細胞毒性が観察された。TBBPAの処置により636個、HBCDの処置により271個の発現変動遺伝子がそれぞれ検出された。エンリッチメント解析によりTBBPA及びHBCDのいずれの処置においても、GO term “endoplasmic reticulum unfolded protein response”でアノテーションされた遺伝子の発現が上昇していることが明らかとなった。リアルタイムPCR及びウェスタンブロット解析により、TBBPA及びHBCD処置後に小胞体ストレス関連遺伝子及びタンパク質の発現が上昇することを明らかにした。さらに、TBBPA及びHBCDの処置により、ネクロトーシス関連因子の発現が上昇していた。以上の結果より、臭素系難燃剤であるTBBPA及びHBCDはPC12細胞において小胞体ストレス応答を誘導し、神経毒性を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臭素系難燃剤であるTBBPA及びHBCDにより引き起こされる神経毒性に、小胞体ストレス及びネクロトーシスシグナルの活性化が関与することをはじめて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマウスを用いたin vivoの実験系において、臭素系難燃剤が脳神経系に及ぼす影響を解析する予定である。また、最近使用量が増加している新規難燃剤についても、それらによる神経毒性発現の有無を検討する。
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Research Products
(2 results)