2023 Fiscal Year Research-status Report
超高感度アンモニアセンサおよびこれを実現する水分制御基盤技術の開発
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22K12416
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
清田 佳美 東洋大学, 経済学部, 教授 (60216504)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | QCM / 吸着 / 水分 / センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の検討により、高感度のアンモニアセンシングにおいて、CuBr, シリカナノコロイドー有機高分子複合系吸着材では、気相中水分は非常に大きな影響を及ぼす外乱要因であることを把握している。QCM応答に及ぼす水分影響を半速度論的に検討するため、今年度作製したミスト噴霧蒸発装置を用いて水蒸気ミスト流への接触・遮断プロセスにおけるQCM応答挙動を観測した。マイクロオーダーサイズ以下のミスト流の接触により金電極を有するQCMは負荷増加の大きな応答(共振周波数の低下)を誘発するものの、マイクロサイズオーダー以下のミストであれば気流の遮断により素早く電極表面から蒸発・消失して影響を解消できることを把握した。一方、金電極以外のAl, Sn, C電極では、この応答が不安定であり、バックグラウンドベースラインの不安定要因になると考えられた。。吸着材材料の化学的安定性について検討するため、研究協力者より電極金属種の異なる種々のQCMの提供を受けて、この電極上でのCuBrの色の経時変化を観察することにより化学的安定性に関する調査を実施した。その結果QCMの電極条件に応じてCuBrの化学的な安定環境が存在するというとても重要な現象を把握した。一方で、多くの電極条件ではCuBrは非常に不安定であり、化学的に劣化してしまうことを把握した。この事実は既存の文献では確認できなかったことであり、既存の同材料を有するセンサの耐久性にも問題がある可能性を示唆した。化学的に安定なCuBrを電極上に作成する手法としてCuBrナノ粒子を電極上で合成しながら沈着させる手法を取り上げ、電極上の液相反応によりCuBrナノ粒子を生成させることができた。今後、これらの電極についてガス吸着応答ならびに水分共存下での安定性の評価を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
選定した吸着材の化学的な安定性が低く、テストガス中の水分によって比較的短期間で劣化することがわかり、この対応が遅れているため。対応策として電極金属構造ならびにCuBrの合成条件の工夫を施した検討をすることとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
CuBrは水溶解度が非常に小さい物質であり、極低濃度のアンモニアセンシングに有効な吸着物質であることは文献調査により間違いないものと考えている。従って、QCM上でCuBrを安定に固定化する(合成する)手法の検討を引き続き行う。具体的には今年度、実験的に把握したCuBrの挙動を考慮し、CuBrの化学的な劣化を抑制する環境調整を行う方針の検討を行う。同時に、CuBrの化学的特性を調査している文献調査を行い、その成果で反映可能なものがあれば適宜利用する。一方で、気流中の水分影響について引き続き定量的な応答データを取得して、種々のRH条件におけるQCM応答をキャリブレーションできるように備える。このため、簡易のフローセルを作成して検討することとする。
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Causes of Carryover |
吸着剤候補材料の化学的不安定性が明らかになり、予定してた検討事項の見直しを検討したこと、中間成果として予定していた国際会議による出張発表を取りやめたため。実験計画変更により、予定額を利用して研究を推進し、その成果を学会にて発表することにより使用する計画である。
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