2022 Fiscal Year Research-status Report
汚染物質分解細菌の新規分離技術の創成と生物学的浄化法への援用
Project/Area Number |
22K12425
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
荷方 稔之 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30272222)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バイオオーグメンテーション / 磁化活性汚泥法 / 1,4-ジオキサン / 16S rRNA遺伝子アンプリコン解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
難分解性物質により汚染された土壌にあらかじめ培養した分解菌を外部から添加する生物学的浄化法としてバイオオーグメンテーションがある。一方で磁化活性汚泥(MAS)法は、磁性粉を添加した活性汚泥を用いることで、磁気力で処理水と磁化活性汚泥を分離する培養法である。本研究では、汚染物質分解細菌を効率的に汚泥内に濃縮・優占化させるためMAS法に着目した。モデル汚染物質として1,4-ジオキサンを用いて長期間にわたりMASを運転し1,4-ジオキサン分解汚泥の馴養及び汚泥内菌叢解析を試みた。 運転開始後1057日目よりMLSS, MLVSSともに減少したため、1101日目にMAS内に磁性粉を添加したところ、MLSSは27654mg/Lまで増加し、1138日目から1221日目にかけて26136mg/L~28774mg/Lの範囲で一定となった。しかしながら、汚泥量が増加した期間におけるCOD除去率は84~85%に留まり、処理水中の1,4-ジオキサンも6.2ppmが残存した(除去率95.0%)。この期間のDO濃度は0.3 ppm以下であり曝気不足による酸素供給の低下により1,4-ジオキサン分解が低下したと考えられた。そこで1227日目に汚泥の引抜きを行ったところ、DO濃度は4mg/L以上に回復しCOD除去率(96.3%)、残存1,4-ジオキサン濃度(0.28mg/L)共に良好な処理性能を示した。また16S rRNA遺伝子アンプリコン解析より、門レベルではBacteroidota門とProteobacteria門が全検出細菌の60~70%を占め、長期間の馴養においても門レベルでは大きな菌叢変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1,4-ジオキサンをモデル汚染物質として磁性粉を添加した磁化活性汚泥を馴養することで、本物質を安定に分解する活性を維持した汚泥を1000日間以上にわたり長期間培養することに成功している。本申請におけるR4年度のもう一つの目標は、これらの1,4-ジオキサン分解汚泥を分離源として1,4-ジオキサンに走性を示す細菌を分離することにある。このため、1,4-ジオキサンで馴化した活性汚泥を希釈後、複合培地上で培養し、増殖したコロニーから約180株の細菌を単離した。これらの分離株から62株において、1mM 1,4-ジオキサンに対する走性を測定したところ、有意な走化性を示す分離株は認められなかった。この理由として、分離株の培養にペプトンなどの一般的な有機物を含む複合培地を用いたため、1,4-ジオキサンの分解を持たない一般細菌がより優先して増殖したことによるものと考えられた。また、運動性そのものを持たない細菌も多く分離されたことから、目的の1,4-ジオキサン走性を示す細菌の分離効率が低くなってしまった可能性も考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1,4-ジオキサンを分解する磁化活性汚泥の馴養は安定して実施できているため、本汚泥を用いてR5年度は引き続き1,4-ジオキサン走性細菌の分離を目指して研究を遂行する。具体的には汚泥を希釈後、寒天培地で培養する際に用いる培地として、炭素源に1,4-ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)のみを用いた合成培地を用いることで、両化学物質を資化し得る細菌のみが増殖する条件下で細菌を分離し、1,4-ジオキサン走性細菌がより優占的に存在する可能性を持った分離株群を取得する(一次スクリーニング)。さらに、非運動性分離株を排除するため軟寒天培地上で培養し、より大きく広がって増殖するコロニーを形成する株のみを選別することで二次スクリーニングを行う。以上の操作で選別された分離株を用いて1,4-ジオキサンだけでなく、THFに対する走性についても測定する。また、1,4-ジオキサンの初期分解には可溶性鉄(II)モノオキシゲナーゼ(SDIMO)の活性が重要である報告があることから、選別した分離株に対してSDIMO遺伝子をターゲットとするコロニーPCRを行うことで1,4-ジオキサン分解に関与する可能性のある分離株を絞り込むことで、1,4-ジオキサン走性細菌の効率的な取得を目指す。
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Causes of Carryover |
磁化活性汚泥の培養槽、磁気分離装置、空気ポンプおよび電源供給器などの装置類が年間を通して安定に稼働し、故障等に伴う部品購入のための支出が無かったこと、および2023年3月に開催された第57回日本水環境学会年会(愛媛大学城北キャンパス)において現地開催が原則であったところ、オンラインでの口頭発表が認められたことで旅費の支出が無かったことによる。
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