2022 Fiscal Year Research-status Report
固体王水による白金族金属の革新的リサイクルプロセスの社会実装に向けた研究
Project/Area Number |
22K12442
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉村 彰大 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60800935)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 白金族金属 / リサイクル / 使用済み触媒 / 固体王水(溶融塩) / 固液分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Ptを含有する使用済み触媒からのPt回収、およびRhとIrの処理に関する基礎的な検討を実施した。 使用済み触媒からのPt回収では、Ptを1,200 ppm程度含有する触媒に対して固体王水を適用し、溶出、および回収に関して検討を行った。その結果、溶出率は2時間程度で85%程度に達し、比較的短い時間で処理可能であることが確認された。また、回収率も最大で78%程度に達し、溶解・回収のそれぞれに一定の結果が確認された。回収の効率化には触媒スクラップの破砕による粒径の微細化が効果的であり、このことから担体であるセラミックが溶出の主な阻害要因であることが示唆された。一方で、溶出時間や粒径など各種処理条件に対し、溶出率や回収率の再現性が低いこと、またプロセスの大型化で大幅に回収率が低下するなどの課題も確認された。 Rhの処理については、固体王水による溶解速度を630-670 Kのそれぞれで定量評価した。また、ギ酸を利用した回収手法による回収率を定量評価した。その結果、630 K以上の処理では溶解速度は大きく変わらず、0.10-0.12 mol・m^-2・hr^-1となった。また、ギ酸によりRhを80wt%程度含有する黒色粉末を回収でき、47%程度の回収率を達成した。 Irの処理については、固体王水による溶解速度を630-670 Kのそれぞれで定量評価した。また、塩化アンモニウムを利用した回収手法による回収率を定量評価した。その結果、特に670 Kでの処理で比較的高速な溶解が確認されたが、0.05 mol・m^-2・hr^-1に留まった。また、塩化アンモニウムの添加処理により高純度の塩化イリジウム酸アンモニウムが回収でき、45%程度の回収率を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
使用済み触媒の処理については、Ptの溶出、および溶出したPtの回収が確認されており、固体王水の適用が可能であることが確認された。一方、担体により回収が阻害されること、またプロセスの大型化で回収率が低下することも確認された。さらに、処理条件に対して再現性が低いことから、これらの点の改善が必要であることが示唆された。 Rhの処理については、溶解速度の定量評価が完了した。また、これまで化合物として不純物の多い形でのみ回収されていたが、ギ酸による処理で比較的高純度の単体が回収されたことから、回収について基礎的な検討が完了した。一方で、回収率が十分ではないことから、この点の改善が必要であることが示唆された。 Irの処理についても、溶解速度の定量評価が完了した。また、これまでは溶解後の回収は確認されていなかったが、塩化アンモニウムによる処理で高純度の化合物が回収されたことから、回収について基礎的な検討が完了した。一方で、やはり回収率が十分ではないことから、この点の改善が必要であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
使用済み触媒の処理については、現状処理しているPtを1,200 ppm程度含有する触媒について、プロセスの大型化や破砕時の粒径の影響など、効率的な回収に関する検討を継続する。これに加え、より低品位な触媒、およびPtとPd両方を含有する触媒の処理を検討する。さらに、触媒を洗浄する際に発生する汚泥についても処理を行い、触媒スクラップのみならず、リサイクル工程で発生する廃棄物の有価物化も合わせて進め、触媒のライフサイクル全体を考慮した環境負荷の軽減を勧める。 Rh、およびIrの処理については、特に回収率、および回収物の純度について向上を進め、回収プロセスの改善を行う。加えて、これらのPGMsを含有するスクラップ(Rh: 触媒、Ir: るつぼ)についても処理を実施し、プロセスを社会実装する際に考慮すべき阻害条件などについて検討を行う。
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