2023 Fiscal Year Research-status Report
環境調和型の高性能バイオプラスチックを合成する水素細菌の分子育種
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22K12449
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生分解性プラスチック / バイオプラスチック / 水素細菌 / 乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素細菌Cupriavidus necatorは糖や脂質のみならずCO2を炭素源として増殖することができるため、CO2から生分解性の高性能バイオプラスチックを生合成することは地球環境汚染を防ぐのみならず、地球温暖化防止にも貢献する。 C. necatorはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)のポリ-3-ヒドロキシブタン酸 [P(3HB)] を合成する。P(3HB)は不透明かつ硬くて脆い高分子材料であるため、実用的ではない。そこで、透明性と柔軟性を付与するため、乳酸(LA)と3HBユニットの共重合体P(LA-co-3HB)の生合成を行った。野生株のH16株やグルコース資化能を有するNCIMB 11599株の分子育種株を宿主とし、D-乳酸(D-LA)ユニットをポリマー鎖に取り込むことができるPseudomonas sp. 61-3由来のPHA重合酵素改変体PhaC1(STQK)、D-乳酸脱水素酵素(LdhD)およびプロピオニルCoA転移酵素(Pct)の遺伝子を導入した組換え株を作製した。これらの組換え株を糖および二酸化炭素を炭素源として培養し、P(LA-co-3HB)の生合成を行った。 組換え株の1つは、グルコースから25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を合成することに成功した。これは透明な乳酸ベースポリマーであると考えられた。さらに二酸化炭素を炭素源として培養したところ、LA分率が8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。また、LA分率の向上を目指して、ldhD遺伝子のコドン最適化を行ったがLA分率を高めることはできなかった。さらにldhDopt遺伝子の上流にtrcプロモーターを挿入して遺伝子の発現量を高めたところ、ポリマー蓄積率は高くなったが、LA分率を高めることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、C. necator H16(野生株)のphbC遺伝子を破壊した株およびphaC1(STQK)遺伝子に置換した株を宿主として利用し、ldhDおよびpct遺伝子を導入した組換え株、さらにphaC1(STQK)遺伝子を導入した組換え株を作製したところ、糖を炭素源としてLA分率が5 mol%以下からなるP(LA-co-3HB)を合成した。しかし、LA分率が低く、P(3HB)とほとんど同じであった。そこで、C. necator NCIMB 11599(グルコース資化能を有する野生株)の3HB供給量を低下させた株を作製し、これを宿主とすることで、その組換え株はグルコースから25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を合成することに成功した。これは透明な乳酸ベースポリマーであると考えられた。さらに二酸化炭素を炭素源として培養したところ、LA分率が8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。しかし、この株は不安定であり、再現性よくポリマーを生産することができないことがわかった。 一方、LA分率の向上を目指して、ldhD遺伝子のコドン最適化を行ったがLA分率を高めることはできず、さらにはコドン最適化したldhD遺伝子の上流にtrcプロモーターを挿入して遺伝子の発現量を高めたところ、ポリマー蓄積率は高くなったが、LA分率を高めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
C. necatorの分子育種株を宿主とした組換え株は、糖を炭素源として透明性を有すると考えられる25 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を20 wt%合成した。これは透明性を有する生分解性プラスチックと考えられた。また、この組換え株は二酸化炭素を炭素源としてLA分率は8.2 mol%のP(LA-co-3HB) を6.8 wt%合成した。さらなるLA分率の向上とポリマー蓄積率を高めることが求められるが、この組換え株は安定性が悪く、同様な組成のポリマー合成能を失う傾向が顕著であった。これはC. necatorにおけるプラスミド保持率の低下が原因と考えられる。そのため、必要な遺伝子をC. necatorのゲノムDNAに挿入してP(LA-co-3HB)合成に相応しい菌株の育種を進めている。相応しい菌株を作製した後には、ポリマーを菌体から抽出・精製し、その熱的性質・ポリマー構造・分子量・機械的性質を調べ、実用的な高性能な高分子材料であるかを調べる。
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Causes of Carryover |
当該年度については、科学研究費以外の外部資金を優先して使用して研究を行った。計画通り研究を遂行するためには、次年度も安定的な研究費が必要なため、科学研究費を繰り越して使用することにした。
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