2022 Fiscal Year Research-status Report
間欠的に貧酸素化する浅海域に生息する底生貝類の斃死リスクに温暖化が及ぼす影響評価
Project/Area Number |
22K12460
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 志保 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60432340)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 温暖化 / 貧酸素化 / 二枚貝 / 閉鎖性海域 / 浅海域 |
Outline of Annual Research Achievements |
水深数メートルの浅海域では海底まで光が届き昼間は光合成が行われるため極端な貧酸素化や持続的な貧酸素化のリスクは低い一方,底層まで水温が高くなりやすいため温暖化が進行すると弱い貧酸素化や間欠的な貧酸素化であっても底生生物への影響は大きくなることが予想される.本研究では弱い貧酸素化の見られる浅海域に生息する底生生物のうち貝類の斃死リスクに温暖化が及ぼす影響を定量的に評価する.まず内湾の浅海域における貧酸素化を再現した水槽で飼育実験を行ない,複数の水温条件下における底生貝類の生残率を調べる.次に高解像度の沿岸海洋モデルを作成して温暖化影響下における浅海域の水温と溶存酸素濃度を予測し,底生貝類の生残率の将来変化を調べる. 令和4年度には,二枚貝養殖環境を調べるための現地観測を実施するとともに,養殖イカダにおける水温・塩分・クロロフィル濃度・溶存酸素濃度の自動観測データを解析した.二枚貝の餌となる植物プランクトンの指標となるクロロフィル濃度は中層から底層で高い一方,底層では溶存酸素濃度3~4mg/L程度の貧酸素状態になっていることが明らかになった.また水温は最高30℃であった.これらの結果に基づき溶存酸素濃度と水温を変えた9通りの条件を設定したトリガイ飼育実験を行なった.その結果,溶存酸素濃度が2~4mg/Lの弱い貧酸素条件下において水温が28℃を超えるかどうかで生残率が大きく変化するという結果が得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では(1)現地観測によるモデル検証データの取得,(2)室内実験による貝類生残率データの取得,(3)高解像度モデルを用いた浅海域における底生貝類の斃死リスクへの温暖化影響の定量化の三段階の研究を行ない,温暖化に伴う水温上昇が,間欠的に貧酸素化する浅海域に生息する底生貝類の斃死リスクに及ぼす影響を定量評価することを目的としている.令和4年度には(1),(2)を行なっておおむね予定通りにデータを得ることができた.ただしモデル作成に必要な気象データについては機器の故障により取得できず,令和5年度以降の課題である.以上のことから,研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度には,養殖海域の現地観測および自動観測データの解析だけでなくトリガイ養殖コンテナ内部の環境計測を行ない,養殖海域との環境の違いを確認するとともに現地でのトリガイ生残率を調べる.また、令和4年度には設定できなかった溶存酸素濃度の日周変動のある水槽を作成し,前年度の結果を補うことのできる条件を設定したトリガイ飼育実験を行なう.また,対象海域の流動・貧酸素化予測モデルの作成,パラメータ調整を行なう予定である.
|
Causes of Carryover |
令和4年度に購入を予定していた機器の価格が予定よりも低く,一方令和4年度に使用していた研究室所属の機器が令和5年度には使用できず購入の必要が生じる見込みであるため,一部の費用を次年度使用額とした.
|