2022 Fiscal Year Research-status Report
Do declines in native flowers promote the cultivation and invasion of non-native ornamental plants?
Project/Area Number |
22K12468
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
江川 知花 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (10765019)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 侵略的外来種 / ガーデニング / 都市化 / 自然植生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、都市割合が高く在来植生が多く失われている地域と都市割合が低く在来の草花を見る機会が多いと考えられる地域間で、外来園芸植物の野生化状況や園芸活動の活発度等を比較し、自然植生を回復・保全することは外来園芸植物の野生化機会の低減に効果的かを検討する。 まず、研究の基礎情報として、現在までに日本ではどれだけの外来園芸植物種が確認されているかを文献、図鑑、標本記録をもとに整理した。その結果、日本では、これまでに園芸・鑑賞用として導入された外来維管束植物少なくとも376種の逸出・野生化が確認されており、このうち73種(19.4%)が在来植物と競争するなどの生物多様性影響を引き起こしていることが明らかとなった。また、園芸に関連する歴史的資料を精査し、野生化している外来園芸植物の中には、古くから尚美的価値が見出され、好んで栽培利用されてきたものが含まれていることも明らかにした。以上の結果は2022年度内に論文投稿、学会発表を行った。 さらに、5月から6月の花期シーズンに、都市割合が異なる関東近郊の10地点において、外来園芸植物の逸出・野生化状況および園芸量販店における販売状況を調査した。その結果、いずれの地点においても多くの外来園芸植物の逸出が確認され、都市割合のより高い地点で逸出確認数がやや多い傾向が示された。また、逸出が確認された種の一部は園芸センターで現在も販売されていることが確認された。しかし、園芸植物としての流通名から種を同定することが難しい場合や、フラワーミックスシード等として複数種の種子が種名をすべて明記せずに販売されている場合も多く、野生化が確認された種のうち現在も市場流通している種がどれだけあるかの把握には時間がかかっている。フラワーミックスシードについては、圃場での栽培試験によって含まれる全種名の特定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は都市割合の異なる10地点で外来園芸植物の逸出・野生化調査を実施することができたが、逸出が確認された種のうち現在も市場流通している種がどれだけあるかの把握に想定よりも時間を要していることから、やや遅れていると判断した。しかし、本年度整備した園芸品種リストやフラワーミックスシード栽培試験にもとづく含有種リストを用いることで、次年度以降は同定の効率を上げることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
都市割合の異なる地域における外来園芸植物の逸出・野生化状況および園芸センターおよびオンラインショップにおける流通状況の調査を引き続き実施する。2022年度は関東近郊において調査を実施したが、2023年度は調査範囲を広げ、自然植生の残存率の高い地域を含むより多くの地点でデータを取得する。さらに、各地域における園芸活動の活発度や、園芸植物の逸出・野生化に関する人々の認識に関するデータをヒアリングや統計情報の解析を通じて取得する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により学会がオンライン開催となったため、学会参加のための交通費が不要となった。さらに、園芸植物の逸出調査については他の調査研究に付随して行えたことから、調査旅費の支出が発生しなかった。また、研究補助員の方の勤務時間短縮の影響により、人件費・謝金の支出が予定よりも大幅に減った。現在、円安の影響により、外貨建ての英文校閲費やオープンアクセス費が著しく高騰していることから、繰り越し分は次年度以降の研究成果公表のための支出に当て高騰分を補完する。
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