2022 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素排出ゼロ社会を志向した吸着分離用新奇金属有機骨格体の開発
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22K12476
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡田 昌樹 日本大学, 生産工学部, 教授 (60287597)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 微細気泡 / 気液界面反応場 / 金属有機骨格体 / 二酸化炭素 / 吸着分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題は二酸化炭素の吸着/分離材料として金属有機骨格体(MOF)を用いることを視野に,新規合成手法を開発することを目的としている。具体的にはMOFの合成過程で微細気泡の導入を行い,微細気泡表面(気液界面)という局所反応場を活用することでMOF自体が有するミクロ構造と微細気泡が鋳型として機能して形成されるマクロ構造を同時に有する材料の製造を目指す。 2022年度は現有の微細気泡発生装置を組込んだMOF合成装置の製作ならびに操作条件の最適化を行うことを計画した。現有の微細気泡発生装置では気泡を発生させる対象溶液の体積が大きいため,反応場に微細気泡を直接導入するのではなく,予め微細気泡を含んだ溶液を溶媒として用いて合成を行う方式に計画変更した。一方,合成反応場に直接微細気泡を導入することをねらい,小規模(100 mL程度)の溶液に対して微細気泡を導入できる加圧溶解式での微細気泡発生装置の設計ならびに試作を行った。現段階では試作機を用いてイオン交換水への微細気泡の導入を行っており,気体の溶解圧力ならびに圧力解放の条件などに注目し,それらが気泡の気泡サイズに与える影響を評価している。当該装置の開発は本実験系で使用する反応装置の制作において不可欠である。また,開発を進める小型微細気泡発生装置は合成反応場への微細気泡の導入を考える様々な実験系への適用が可能であり,工学分野での微細気泡の利用ならびに新たな反応・分離プロセスの開発に寄与すると考える。 また合成を目指すMOFとして,二酸化炭素吸着特性に優れるとの報告があるN,N′-dimethylethylenediamineで修飾したMOF-74(mmen-Mg2(dobpdc))ならびにゼオライト様のMOFとして工学的な利用が注目されているZIF-8を選択し,合成条件の検討や微細気泡を導入していない系でのMOFの試作を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存の微細気泡発生装置ではリットル・オーダーの溶液に対する微細気泡の導入となるため,小規模の対象溶液に微細気泡を導入可能な装置の開発を計画した。当該年度は既存の微細気泡発生装置をベースに数百mL程度の対象溶液に対して微細気泡を導入可能な装置を目指して試作に取り組んだ。現段階では発生する気泡のサイズコントロールに難航しており,微細気泡発生装置の運転条件の最適化に取り組んでいる。当初,2022年度中に装置開発に目処をつける計画であったため,装置開発に遅れを生じているといえる。今後,装置の動作圧力のコントロールに重点を置き,検討を進める計画である。 また,二酸化炭素吸・脱着特性を基にベースとするMOFの選択を行い,mmen-Mg2(dobpdc)の合成条件の検討を行った。その結果,既往の報告にある合成条件,特に反応温度の条件が微細気泡を共存させる実験系では実現が難しく,合成条件の探索を含めた実験系の再構築が必要となった。現在,微細気泡を共存させた系での合成を視野にmmen-Mg2(dobpdc)合成の低温化に向けた反応条件の探索を行っている。また並行して水溶液中やアルコール溶媒中での室温合成が報告されているZIF-8などのMOFに注目し,その合成についても取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
加圧溶解式の小型微細気泡導入装置として,気体溶解部と微細気泡を発生させてMOFの合成を行う反応部の2槽からなる装置を設計し,試作を行っている。2023年8月末を目処に反応系の完成を目指し,気体の加圧溶解条件,気体を溶解した溶液の反応部への流入速度,反応部の気相部分の加圧条件などを運転条件として調整を進め,微細気泡の気泡サイズの制御性の向上を目指す。 並行して現有の微細気泡発生装置により液相に気泡を導入した溶媒を用いて調製した反応原料溶液を用いてMOFの合成を行い,MOF合成場への微細気泡の導入効果を合成されるMOFの特性評価に基づいて検討する。具体的には微細気泡の有無が形成されるMOFに与える影響を明らかにするため,粉末X線回折や比表面積測定,吸着挙動の動力学的評価などを実施する計画である。なお,現有装置で微細気泡を導入した溶媒で反応原料溶液を調製して実験を行った場合,液相への滞留時間が長いナノバブルの効果のみが現れると考えている。 一方,合成を目指すMOFとして2種類のMOFの合成を並行して進める計画である。1つめはMg2+と4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ビフェニルジカルボン酸からなるMg2(dobpdc)をN,N′-dimethylethylenediamineで修飾したmmen-Mg2(dobpdc)であり,もう1つはZeolite様のMOFとして工学的な利用が模索されているZIF-8である。現在,微細気泡を導入しない条件での合成を行っており,微細気泡の導入に向けた合成条件の最適化をはかっている。今後,微細気泡の導入に向けて低温かつ迅速な合成が求められることから反応温度と共に原料濃度や仕込みの原料比に注目して検討を進める。 なお2023年10月を目処に独自に開発する加圧溶解式小型微細気泡導入装置を用いたMOFの合成を行い,得られたMOFの特性評価を行う計画である。
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Causes of Carryover |
計画していた微細気泡の導入機能を持つ反応装置の製作は,小型微細気泡発生装置の開発に難航したため研究計画に遅れを生じ,結果的に助成金の使用に至らなかった。現在,加圧溶解式での微細気泡発生器の試作を精力的に進めており,装置仕様の見直しならびに操作条件の最適化を行っている。具体的には,当初,反応器内の気相圧力については余り注目していなかったが,検討している微細気泡の発生方式の場合,反応装置内全体の気相圧力をコントロールすることが好ましいと考えられるため,背圧弁の設置など装置構成の見直しを行いたいと考えている。これらの段階を経て2023年度中頃(8月を目処)までに反応装置の制作を進める計画のため2023年度へ繰越とした。 また,現有の微細気泡発生装置で調製した微細気泡含有溶液を用いたMOFの合成を並行してすすめ,2023年度中に制作した反応装置を用いた検討に移行する予定である。
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