2023 Fiscal Year Research-status Report
Hardening Mechanism of Geopolymer Concrete by Binderless Formulation
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22K12477
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小泉 公志郎 日本大学, 理工学部, 教授 (10312042)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ジオポリマー / フライアッシュ / シリカフューム / 火山灰 / ケイ酸構造 / NMR / TMS誘導体化 / 低炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の課題であったバインダーレス配合(硬化のためにセメントや高炉水砕スラグ等の水硬性材料(バインダー材)を用いない配合)における,硬化体の強度発現と基材(ジオポリマーを作製するにあたり必要となるベース材料)である「ポゾラン材料」(主としてシリカフューム)の反応性の関連を検討する点に重点をおいて研究を進めた。強塩基性下におけるポゾラン材料の反応(ポゾラン反応)の経過を詳細に観察するためにはポゾラン材料のシリケート構造の経時的な変化を押さえる必要があり,現状では固体NMR(29Si-NMR)法かトリメチルシリル(TMS)誘導体化法を用いることとなる。検討の結果,固体NMR法ではポゾラン材料の基本構造(長鎖タイプの非晶質シリケート)からポゾラン反応によりケイ酸イオン(短鎖タイプのシリケートアニオン)が生成する傾向を詳細に観察するにはかなりの長時間による測定が必要となり実用的な測定法にはなり得ないことが分かり,今後も引き続き,固体NMRによる測定における有効な測定条件の検討が必要であることを確認した。またTMS法による検討では,短鎖タイプのシリケートアニオンの分析に有効であることは分かっていたものの,実際に試製したジオポリマー硬化体の試料について分析したところ,ポゾラン反応を誘導するために水酸化ナトリウムの多量添加を行っていることが原因で,TMS化反応の誘導体化試薬の酸性が打ち消されてしまうことを把握した。 また初度より検討を加えた「火山灰微粉末」(シリカフュームの代替材料)のポゾラン活性については,シリカフュームよりも反応初期における若干反応性に劣ることが分かったが,数日の材齢が経過すればその差はほとんど無いことや,火山灰微粉末はアルミニウム成分を含みポゾラン反応の過程でアルミニウムイオンの溶出も起こることからアルミノケイ酸塩ゲルが積極的に生成する傾向にあることを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジオポリマー硬化体の試製手順については,昨年度における検討を経てキューブ状の試験用硬化体を作製できる目処が立った。ただし,その反応率の測定にあたり当初に想定していたTMS法の適用では不十分である事が判明した。すなわち,TMS法ではその誘導体化反応の過程でシロキサン末端の金属(M)イオンとのイオン結合(Si-O-M)を塩酸で切断し水酸基(Si-OH)とすることでTMS基への誘導体化反応が直ちに進行する。この際の塩酸は誘導体化反応の過程で触媒的に反応→生成を繰り返すことでほぼ一定量が反応系に存在するが,ジオポリマーの硬化反応(ポゾラン反応の活性化)のためにかなり多め(過多量)の水酸化ナトリウムが使用されており,反応系中の塩酸を中和し消費してしまうことで,金属イオンの切断反応が阻害されてしまうことが原因と判明した。そのため,TMS法の改良法として誘導体化試薬の一部に濃塩酸を必要量添加することで対応可能(誘導体化試薬の酸性度を保つことが可能)であることを実験的に把握できた。ただし,TMS誘導体化試薬中への濃塩酸の最適添加量についてはまだ多少の検討の余地があり,その一部は次年度における検討課題とした。 またこれと併せて,ポゾラン材料(原材料)の反応の経過を直接確認するために,走査型電子顕微鏡によるジオポリマー硬化体の微細組織観察が重要であると確認できたことから,観察のための試料片作製方法を試行的に検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
ジオポリマーの硬化メカニズム解明のカギとなる,原材料のポゾラン反応の経過およびその活性度については,TMS化法により,ある程度調査が可能である見込がついているが,当初の予定通り,フライアッシュとシリカフュームの最適配合および養生条件等に着目した検討を行う予定である。試製した硬化体の圧縮強度試験を行うと共に,強度試験後の供試体を微粉砕し,成分の相組成の決定と,シロキサンオリゴマーの生成量の調査を極力多くのパターンの硬化体で試すことで,まずは最適配合条件と,最適な養生条件を見いだすことを当面の課題とする。またこれと併行して,ポゾラン材料のケイ酸構造の推移(ガラス状長鎖シリケート→短鎖ケイ酸イオンへの変遷の過程)の観察には固体NMRの情報が有用であることから,本学装置のオペレータへの相談もしくは外部の分析機関への委託分析も含め,改めて検討したい。 また,シリカフュームと火山灰微粉末のポゾラン活性に関する相違等について得られた知見については,その一部を令和6年6月開催の「コンクリート工学年次大会2024」にて,ジオポリマーの配合と強度発現についての成果の一部を令和6年9月開催「土木学会 第79回年次学術講演会」(宮城県仙台市)にてそれぞれ学会発表を実施する予定である。(いずれも講演申請済)
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Causes of Carryover |
ジオポリマー硬化体の作製にあたり使用している各種材料の反応率についてはある程度TMS法にて把握できる見込みがついているものの,実際の硬化体中の微細組織の観察を併せて実施し,反応状況の根拠とすることが重要であるとの結論に至った。しかし,この観察手法は以降の検討を実施する以前に確立しておく必要がある。実際の観察には走査型電子顕微鏡(装置は所有)を用いることができるものの観察試料の前処理(特に「鏡面研磨処理」)が必須である。そこで本年度中にも様々な検討および情報収集を実施したが,硬化体試料の「包含用樹脂の選択」およびこれらの「研磨過程(研磨紙の型番や鏡面仕上げ用ペーストの活用方法など)」にかなりの秘匿性のノウハウがあり,論文等では詳細な記載がされない情報であることから試行錯誤が続いていた。 そこで次年度において,前処理(鏡面研磨処理)を実施してもらえそうな分析機関を選定し,外部発注として組織観察用試料の「鏡面研磨」処理を委託することを検討した。ただし現状では「鏡面研磨のみ」を受託している組織がほぼ無いことから,前処理も含めた組織観察そのものを外部発注(前処理も含めて1サンプルあたり15~20万円程度)し,結果のヒアリング時にノウハウを含む情報も併せて入手する見込み。前処理を含めた観察を自前で実施可能にするための必要予算として次年度に一部を繰り越すこととした。
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