2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of how environmental regulations affect the economic lifetime of international marine vessels and the value of their assets
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22K12489
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岡田 啓 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (40450762)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際海運 / 環境規制 / 原油 / タンカー / 資産価値 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境規制が耐久消費財の耐用年数とその中古市場価格(資産価格)にいかなる影響を与えるのかを解明するため、国際海運における環境規制である原油タンカーへのダブルハル規制をケースとして実証分析を行う。この実証分析を実施するためには、過去の規制の歴史的経緯と原油タンカーに関する各種データ(例えば、建造年、廃船年、タンカーのスペック、船種の推移、船の価格、取引の推移、取引後の旗国、船社)が必要となってくる。 よって、2022年度には、第一に原油タンカーへのダブルハル規制に関する文献調査、第二に原油タンカーに関するデータベースの整備を行った。前者の文献調査では、国際海事機関IMOにおけるダブルハル規制特にフェーズアウトを義務とした13G規制の歴史的経緯やこのダブルハル規制に関わる研究や調査報告書を渉猟した。また、原油タンカーの事故に関連する研究、タンカーや耐久消費財に関連する文献等を集め、整理を行った。 後者は、Clarkson Research社が発刊しているTanker Registerに掲載されているデータを過去から精査し、データの利用可能性・取得可能性を検討した。結果、本研究で重視しているダブルハルと個々の原油タンカーが結びついたデータが一定年以降から存在していることが分かった。そのため、そのデータが記載されている年以降のTanker Registerから原油タンカーの個々の船に関するデータを入手し、電子データに変換した。Tanker Registerのデータはデータの種類が少ないため、IMOが提供しているデータベースから、別種のデータを取得し、データの質を高めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原油タンカーのデータベースの整備が当初予定よりも遅れている。このことである。これは、第一に過去の石油タンカーのデータを電子化することに、当初の予想よりも多くの時間が必要であることがデータベース整備の中で判明したためである。2022年度に契約したClarkson Researchのデータベースは過去の船舶データが存在しなかった。そのため、冊子体のTanker Registerをスキャナに読み込み、そして電子化する必要がでてきた。このスキャナからの取り込み、データをクリーニングするのに時間を要している。そして、船舶は名前を頻繁に変更する。これより、年次を跨いだデータベースでデータの名寄せを行わなければならない。この名寄せの作業を行う際に、過去の船舶データを精査するのに労力と時間を要している。さらに、手持ちの船舶データやIMOのデータベースとの連結も実施する必要があった。なお、2022年度末時点で、1996-7年の2か年分の資料から約3000隻の原油タンカーデータベースを作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、次の3点を実施する。第一に引き続き文献調査を行う。ダブルハル規制の時間的経過を重点的に追うことにする。IMOでの議論は、事前に業界団体などから意見を聴取した上で行われる。よって、環境規制が強化されることについて船社等は規制が発効するより前に情報を入手している。このことを考えると規制の発効年月だけではなく、事前の議論がいつ始まったのかなどの情報も整理し、実証分析に反映させる必要がでてくる。 第二は、データベースの核となる部分のある程度が2022年度末で作成できているので、現時点で入手しているデータにて原油タンカーに関わる状況の概観と分析を実施することである。データベースを完成させるためには、まだ時間を要する。他方、現時点で3000隻分の個別データが存在する。このデータを可視化し、環境規制により原油タンカーにいかなる影響があったのかを概観する。またデータベースにある中で可能な分析、候補としては生存解析、を実施する。 第三は、データベースのさらなる整備と拡張を行う。現在は1996-1997年の2か年分のデータが手元にあるが、過去と現在の双方に向かってこのデータベースを拡張する。拡張に際しては、過去に入手した船舶関連のデータ、Clarkson ResearchのTanker Registerの電子化したデータ、IMOのデータベースのデータを基本とする。また、データ整備の進捗やデータの幅を広げるために、IHS MarkIt社のデータベースと契約することも検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度に研究に必要となるTanker Registerを用いたデータベースの整備が順調に進んだならば、データの質を高め、また取引に関するデータを取得するべくIHS MarkIt社のデータベースを契約する予定であった。その際、2022年度の予算だけでは足りないので、予算の前倒し申請を行った。だが、実際は、最初のデータベース整備が予想外に時間がかかり、2022年度末までに基盤となる部分が整ったに留まった。よって、2022年度内に契約をする予定であったデータベース利用代が必要なくなった。このような経緯により使用額に差が生じた。 今年度は、研究そしてデータベースの整備を進め、データの質を高めるべくIHS MarkIt社のデータベースの契約を含め順次計画的に支出を行う。
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