2022 Fiscal Year Research-status Report
PFASの一括規制に向けた環境残留性に着目した構造的特徴の解析
Project/Area Number |
22K12496
|
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
高木 総吉 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (80332451)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | PFAS / 撥水剤 / 家庭用品 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機フッ素化合物(PFAS)は生物や環境中での残留性とその毒性が問題視されており、多くの国でその使用に対し規制が設けられ始めている。しかし、PFASは我々の生活にとって非常に便利な性質を有しているため、すべてのPFASを規制した場合の影響は大きい。そこで、実際の製品に使用されているPFASについて明らかにし、そのPFASの環境への残留性について構造式から評価することを目的とした。 1年目はまず入手可能な標準品を用い、LC-MS/MS測定を実施して、構造情報が得られるフラグメントイオンについて調べた。 次に、市販の撥水剤、撥水加工された繊維製品を用いて、実際の製品に使用されているPFASについて調査を実施した。今回は43種のPFASを分析対象とした。撥水剤は過去試料として購入日が不明から2016年に購入した20試料、2022年に購入した18試料を対象とした。その結果、過去試料の6試料からスルホンアミド系のPFASが検出された。また、日本において水道水や環境水で規制対象となっているPFOAも8試料から検出された。しかし、その濃度はスルホンアミド系のPFASに比べ非常に低かったことから主成分ではなく、不純物として含まれていたと考えられた。PFOSについては定量下限値未満であった。一方、2022年に購入した試料からは分析対象としたPFASはすべて定量下限値未満であった。このことから現在市販されている撥水材はすでに対策がされていることがわかった。 撥水加工された繊維製品、4試料を分析した結果、2試料からPFOAが検出された。しかし、その濃度は低くかったことから、撥水加工の主成分ではなく、製造工程中か流通中の汚染である可能性が考えられた。したがって、撥水剤と同様に現在市販されている撥水加工された繊維製品についても対策がなされていると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全国的なヘリウムガス不足により、ヘリウムガスを使用するGC-MSで測定する半揮発性PFASの分析法については十分な検討ができなかった。そのため、今年度は半揮発性PFASの検出報告のある化粧品については分析ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
LC-MS/MSで測定するPFASについては分析法が概ね確立したため、分析対象試料を増やし、実際に流通している商品に含まれるPFASの実態調査を実施する。特に撥水加工された繊維製品については4試料しか調査できていないため、優先的に試料を入手して分析を実施する。 また、GC/MSで測定する半揮発性PFASについてはAPGC-MSを使用し、キャリアガスとして窒素ガスを用いる方法を検討する。本装置を用いて半揮発性PFAS使用の報告がある化粧品について分析を実施し、使用されているPFASについて調査を実施する。 分析対象としたPFASが検出されない試料があったことから、分析対象を決めたターゲット分析だけではなく、高分解能の質量分析計を用いたノンターゲット分析を行い、得られるフラグメントイオン情報からその化合物に含まれる特徴的な構造を推定する。
|
Causes of Carryover |
当初参加を予定していた国際学会がコロナの感染状況を考慮してオンライン参加にしたことと、GC-MSの使用が難しかったため、GC-MS測定関係の物品購入を行わなかったことから次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせてAPGC-MS測定関係の物品費と国際学会参加のための旅費として使用する。
|