2022 Fiscal Year Research-status Report
The Current Situation and Issues of Community Participation of REDD+ Policy in Tanzania -from the Viewpoint of Safeguard
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22K12502
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
福嶋 崇 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (40634291)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | REDD+政策 / セーフガード / 参加型森林管理(PFM) / パリ協定 / タンザニア / 環境ガバナンス / グッド・ガバナンス / FPIC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、事例とするタンザニアにおいてREDD+政策(途上国における森林減少・劣化防止を通じた温室効果ガス削減政策)へと適用することが検討されている参加型森林管理(PFM)事業のもとでの「住民参加」について、REDD+の文脈において、特にセーフガード要件の観点から問い直すこと、である。本研究では、特に政府・地域住民の両アクター、両者間のパートナーシップに着目し、グッド・ガバナンスの構成要素としての説明責任、透明性、情報公開の3要素を主な分析項目として、計5回の現地調査を通じ、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」などの観点から住民参加の現状・課題を明らかにする。 当該年度は主に1.REDD+政策の国際交渉の進展や各国の動向に関する情報収集を行い、2.タンザニアにおける海外調査、及び、3.以上をベースにした論文の作成、については十分に行うことが出来なかった。一方で、4.タンザニア調査が困難であったことから、日本国内の情報収集に注力し、国内カーボン・オフセット制度として展開・発展してきたJ-クレジット制度(森林分野)のパリ協定目標達成に向けた貢献可能性を明らかにする論文の執筆を進めた。 1.交渉担当者や専門家などへの聞き取り調査や文献調査により、継続的に情報収集を行った。特に毎年開催のCOPではパリ協定やREDD+のルールなどが議論、決定するため、重点的に情報を収集した。 4.国内カーボン・オフセット制度としては2013年度開始のJ-クレジット制度が代表的であり、その特徴は森林を対象に含めている点にある。吸収源CDM政策・REDD+政策などとの比較を踏まえ、案件数・クレジット認証量に対するクレジット価格・活用状況の推移から、同制度のパリ協定目標達成に向けた貢献可能性について分析・考察した論文の執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載していた当該年度の研究計画としては、REDD+の国際交渉の進展などに関する情報収集、タンザニア・ダルエスサラーム及びアルーシャ州を対象とする海外調査、論文の執筆・投稿、学会における口頭発表、としていた。 国際交渉の進展などに関する情報収集は2003年より継続して実施してきており、交渉担当者や政府関係者、専門家などとも十分に良好な関係を構築できていることから、順調に行っている。 一方、タンザニア現地調査については、所属機関の方針、タンザニア国内の感染拡大状況、同国政府の方針などを総合的に勘案し、2022年度の調査を断念した。とりわけタンザニア政府の感染症対策の優先順位は高い(高くなった)一方で、森林関連政策の優先順位は必ずしも高くない傾向にある。次年度もしばらくはこの状況が続くと想定される中、今後はこうした状況下で十分な調査結果を得るための最善な方法を再度検討し直す。特に新型コロナウイルス感染症に関する世界的な潮流や日本・タンザニア両政府それぞれの方針などを適宜適切に把握しながら、慎重に判断する。 加えて2022年度より2年間の任期で学科教務主任に任じられることとなった。とりわけ2022年度は通常の業務に加え2023年度開始の新カリキュラム設計・調整、5件の新規採用人事などの学務に終始追われることとなり、申請時に予定していたエフォートを割いて研究活動を行うことが困難な状況にあった。 このように十分な調査結果・研究成果を得づらい状況にあったため、当初計画していた学会での口頭発表を断念した。その分、エフォート自体を修正しながら、セーフガード、参加型森林管理、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」などに関する文献レビューに集中し、これらをベースにより綿密な調査計画を立てることに注力する。
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Strategy for Future Research Activity |
REDD+の国際交渉に関する情報収集については次年度以降も継続する。一方、2023年度も学科教務主任としての学務への従事という状況は継続されるものの、特に新型コロナウイルス感染症に関する世界的な潮流の変化を受けた日本・タンザニア両政府の方針の変更・緩和が期待できることから、タンザニア現地調査(状況に応じて1-2回)を再開する。ただし、タンザニア政府の森林分野の優先順位の相対的な低さという特殊な社会状況は次年度も続くことが想定されるため、電話・メールなどを使用するなどして日本からも積極的な情報収集に努める。 REDD+に関する研究の方向性として、過去の現地調査結果を再度見直し、2013-15・2017-19年度の科研費採択時の研究成果として構築した政策評価フレームワークを用いてREDD+の政策評価を行うと同時に、今後本格的に実施ステージに入るREDD+の制度設計のあり方について考察・提言を行う予定である。さらに、これまで研究対象としてきた吸収源CDM政策との比較を行うことを念頭に、関係アクターの参加、パートナーシップの現状及び今後に向けた動き、REDD+に対する関係アクターの評価(利点・問題点など)を把握する。 次年度は、今年度断念した学会発表の内容として予定していた「REDD+試験事業における住民参加の現状と課題―FPICの視点から」について、第135回・日本森林学会(2024年3月)にて発表し、同内容をベースに投稿論文を作成し、『African Journal of Environmental Science and Technology』誌に投稿する。論文は、タンザニアの関係者への公表を念頭に英語で作成する。
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Causes of Carryover |
上述の通り、2022年度は特にタンザニア現地調査の実施が困難な状況にあったため、十分な研究成果を上げることが困難であった。そこで旅費(海外渡航費、学会参加や聞き取り調査などのための国内旅費)や物品費(書籍購入費)を繰り越すことで、次年度以降により集中して研究成果を上げられる状況を整えることにした。 可能であれば2023年度は8月、2月の2度タンザニア現地調査を実施するなどして積極的な情報収集に努める。また、海外現地調査や国内聞き取り調査、文献調査などから得られた研究成果をまとめて学会発表を行う予定であり、このための旅費として研究費を使用する。
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