2023 Fiscal Year Research-status Report
沿岸資源の持続的な利用を可能にする社会システムの解明
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22K12503
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
脇田 和美 東海大学, 海洋学部, 教授 (60734902)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会受容性 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸資源の持続可能な利用は、人類の生活基盤の一つである。しかし、海洋環境の変化や沿岸開発による水産資源の減少や、貝毒の頻発化・広域化が世界的な社会問題となっている。これまでは、水産資源の減少や貝毒の頻発化等の原因を環境に求める自然科学的研究が主流であったが、近年ではこのような問題の解決には、社会科学的な方法が不可欠であることが認識されつつある。本研究は、この流れに鑑み、社会科学的方法によって、貝類資源を利用する伝統的娯楽の一つである潮干狩りに着目し、沿岸資源の持続的な利用を可能にする社会システムの解明を目的とする。具体的には、海洋環境の変化による貝毒の頻発に対し、大阪府の潮干狩り場で導入・定着している無毒な貝との交換という適応策を取り上げ、その適応策が社会に定着した要因を明らかにするものであり、市民、自治体、運営者・漁業者の三者を包括的に捉えた社会システムの解明を目的としている。 3年計画の本研究の2年目にあたる2023年度は、貝毒に関する社会受容性の長期的な変遷を把握するため、貝毒に関する新聞記事を対象としたテキスト分析を行い、その結果を国際有害藻類学会2023で発表した。また、潮干狩りに関する新聞報道の長期的な変遷を把握するため、「大阪」および「潮干狩り」の語を含む新聞記事を対象としたテキスト分析を行い、その結果を含むこれまでの研究成果を国際会議Coast Caen 2023で発表した。あわせて、研究協力者と対面で研究会を開催し、貝毒発生時における潮干狩り場の開場に対する社会受容性に関するWEBアンケート調査について、設問概要を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年計画の本研究の2年目にあたる2023年度は、貝毒に関する社会受容性の長期的変遷を把握するため、新聞記事を対象として貝毒の報道内容の変遷を明らかにするとともに、大阪の潮干狩りに関する新聞報道の長期的変遷を明らかにした。当初は、2年目にWEBアンケート調査を実施する計画であったが、研究協力者との議論などを通して、アンケート調査の設計にあたり、貝毒に関する社会受容性の長期的変遷と、大阪の潮干狩りに関する新聞報道の長期的変遷を把握しておくことが重要であるという認識に至った。そのため、アンケート調査の実施は、次年度に持ち越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である2024年度は、大阪府の住民に対するWEBアンケート調査を実施する予定である。また、大阪府、貝塚市、岬町、および潮干狩り場運営主体へのインタビュー調査を行い、大阪府の潮干狩り場で、貝毒発生時下でも開場継続が可能になった背景を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2023年度は、2つの国際学会で研究発表を行ったため、予定以上の旅費が必要となった一方、WEBアンケート調査の実施は翌年度に持ち越したため、アンケート調査費用は不使用となった。その結果、全体としては次年度使用額が生じることとなった。2024年度は、2023年度の調査結果を反映したWEBアンケート調査を行う予定であり、発生した次年度使用額は、2024年度の助成金とあわせてアンケート調査費として使用する予定である。
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