2022 Fiscal Year Research-status Report
Capital shadow price dynamics and sustainability in wealth accounting
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22K12510
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山口 臨太郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会システム領域, 主任研究員 (30557179)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 富会計 / ジェニュイン・セイビング / 持続可能性 / シャドープライス / 自然資本 / 包括的富 / ハートウィック・ルール / 炭素の社会的費用 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能性を、世代間ウェルビーイングが改善していることと定義したときに、資本ベースの持続可能性指標が使われる。具体的には、自然資本、人的資本、人工資本など、社会にとって重要な資本ストックの価値の合計が全体として増加しているかどうかを見る。その際、各資本に重みづけを行うシャドープライスが重要な役割を果たす。 本研究では、1)近年の研究を踏まえ、シャドープライスが何を意味するのかを整理する。2)シャドープライスが時間とともに変化する場合、平均値を使うことで生じる福祉変化の評価バイアスを検討し、富会計にシャドープライス変化をどう取り込むべきか検討する。3)グローバルな自然の希少性を表すシャドープライスをローカルな富会計でどう表現すべきか検討する。4)炭素の社会的費用を組み込んだ、化石燃料の価値評価を行う。 初年度(2022年度)は、1)のレビューに着手しつつ、3)と4)の分析も開始した。3)について、各国の自然資本には、グローバルな自然の希少性が反映されていないという問題点があった。具体的には、グローバルな自然に対する負荷(エコロジカル・フットプリント)が過大であるにもかかわらず、各国の自然資本とシャドープライスにはその点が反映されていない。そこで『生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー』のアプローチを発展させ、グローバルな自然に対する負荷の減少を、効率性改善として各国の資本に加える枠組みの構築を行った。 4)について、二酸化炭素の排出を世代間ウェルビーイングの持続可能性指標に反映させる際、当初想定していた、炭素の社会的費用を組み込んだ化石燃料の評価以外にも、代替アプローチがありうることが明らかになった。具体的には、世界の現在の二酸化炭素の排出の社会的費用と、各国の将来の二酸化炭素排出削減の割引現在価値を加えるというものである。この二つのアプローチについて枠組みの理論的検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において書いた四項目(1.シャドープライスの意味付け整理、2.変化するシャドープライスの分析、3.グローバルな自然のシャドープライスの表現、4.炭素の社会的費用への適用)のうち、2については着手できていないが、3,4、については具体的な分析を開始した。また1についてもレビューは進めている。
そのため、全体としては、初年度の計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.シャドープライスの意味付け整理、3.グローバルな自然のシャドープライスの表現、4.炭素の社会的費用への適用、について、引き続き研究を継続する。 また2.変化するシャドープライスの分析については、他のアプローチの可能性も含めて、リサーチクエスチョンに合致したアプローチを検討する。
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Causes of Carryover |
国内学会や国内打ち合わせが、コロナウイルス感染症の影響で引き続きオンライン開催されたことで、旅費が当初予定より少なくなった。次年度以降の旅費に使う予定である。
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Research Products
(13 results)