2022 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける移民の労働環境と移民制度改革に関する研究
Project/Area Number |
22K12522
|
Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
中島 醸 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (00401670)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | アメリカ / 移民政策 / トランプ / DACA / 短期就労ビザ / H-2B |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、アメリカの移民労働者の処遇にかかわり、政策面での動きと制度面での実情についての研究を進めてきた。今年度は、この2つの研究について拓殖大学政治経済研究所の紀要『拓殖大学論集 政治・経済・法律研究』に論文が掲載された。前者に関しては、「子供時代に入国した者に対する(国外追放)措置の延期」(DACA)をトランプ政権が延長するか否かが、非正規滞在移民労働者の将来に大きくかかわっている。トランプ政権は2017年にこのDACAを廃止することを提案したが、共和党内でDACAの代替政策をめぐる対立と、民主党側の強い反対の下で実現しなかったことを考察した。後者については、アメリカのH-2Bという短期就労ビザの下で働く労働者たちの労働環境について考察した。アメリカでは、H-2Bプログラムが高技能職以外の職種を対象とした短期就労ビザ制度として制定されている。このビザの下では、ビザの終了後、もしくは職場を離れて資格を失った場合、労働者たちは本国へ帰国することが義務付けられており、さらにビザ取得時に設定された使用者の下でのみ就労可能となっている。こうした制約から、このプログラムの下で働く労働者の中には、高額なあっせん手数料を請求され借金して工面したり、残業代が未払いとなったり、不衛生な宿舎に対して高額の家賃が請求される事態も見られていることを論じた。また2022年5月の「アメリカ政治経済研究会」において、トランプ政権の移民政策とその下での短期就労ビザの受け入れ状況について報告した。トランプ政権自体は、移民に対して排斥的な姿勢を明確にしているものの、H-2BやH-1Bなどの主要な短期就労ビザの承認数は、新型コロナウイルスのパンデミックが起きる前までは大幅な変動はなく、若干増加していたことを報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度では、課題全体を見通して、移民政策の現状や論点を考察することは進んだ。また、移民労働者の労働環境に関する考察では、ビザ制度との関連での実態については検討してきた。ただ、移民制度改革の中でも、短期就労ビザにかかわる制度改革をめぐる議会の動向の分析や、移民労働者の労働環境について、産業別の特徴をレビューすることについては、十分に進んではいない。こちらは、政策面ではトランプ政権による「子供時代に入国した者に対する(国外追放)措置の延期」(DACA)廃止の提案が移民労働者の処遇に大きくかかわるため、この分析に時間がとられたことや、短期就労ビザのプログラム自体が移民労働者の労働環境改善の強い制約条件となっていることから、この考察を優先したことが理由として挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、移民政策の枠組みや、高技能職以外の職種を対象とした短期就労ビザ制度であるH-2Bプログラムの問題点などを考察してきた。そのため、2023年度は、移民政策の中でもH-2Bプログラムの改善をめぐる政策立案をめぐる論点やその経緯の研究を進め、移民労働者の労働環境に関するレビューを産業や地域・ジェンダーの視点から進める。また、海外調査に関しては、研究者との打ち合わせや資料収集を予定している。
|
Causes of Carryover |
2022年度では、新型コロナウイルスの影響から、予定していた研究会や学会での国内出張がオンラインでの参加となったことにより、旅費の使用が進まなかったことが理由である。次年度での、出張旅費ならびに、必要な文献や資料も多く存在するため、そうした使途で使用予定である。
|
Research Products
(2 results)