2022 Fiscal Year Research-status Report
北欧における民族主義と国民高等学校の関連性―福祉国家の形成基盤として―
Project/Area Number |
22K12554
|
Research Institution | Hagoromo International University |
Principal Investigator |
田渕 宗孝 羽衣国際大学, 現代社会学部, 准教授 (60788735)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 北欧 / 民族主義 / 国民高等学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、二つの口頭発表を行った。一つは、「グロントヴィの捉え方~ナショナリズム論を参考に~」というタイトルによる研究会発表である。同発表では、1844年に設立されたデンマークの国民高等学校の歴史背景とグロントヴィ思想の関係から、その後のグロントヴィ主義言説に影響を与えているシンボル要素をナショナリズム論から考察したものである。二つ目は、社会教育学会研究大会にて行った「ナショナリズム研究からのグロントヴィ主義再考察」と題する口頭発表である。本発表では、アントニー・スミスが自らの論文で、グロントヴィをnational educatorと位置付けた点に着目し、デンマークの国民高等学校をめぐる教育言説の解釈分析を行った。 これらの二つの口頭発表から、以下の点を指摘できた。一つは、国民高等学校をめぐる各時代の言説には、北欧としての理想やアイデンティティを表象するシンボル要素が複雑に組み込まれており、そこには歴史的な事実と愛国的物語が混在しているということである。もう一つは、そうした国民高等学校言説とグロントヴィのnational educatorとしての言説が結びつき、愛国教育と独自の民族主義的言説が、「民主主義」という言葉に集約されてきている点である。 現在は、上記の過程を19世紀の同学校教師の雑誌記事や手記を手掛かりとして取り纏める作業を行っていきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度については、文献調査を中心に研究を進めてきたが、これまで収集してきた資料の整理に思った以上に時間がとられている。またコロナ禍の影響等により、口頭発表した内容の現地調査を踏まえたテキスト化が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に行った口頭発表の内容を論文にまとめることを念頭に、北欧の現地調査を行う予定である。特に、19世紀の国民高等学校機関誌「ホイスコーレ雑誌」を中心に資料分析を行い、同時代の北欧における民族主義発展に対する学校言説を明らかにしたいと考えている。加えて、同時代におけるノルウェーの詩人で国民高等学校に強い影響を与えたビョルンソンの民族意識を、上記デンマークの言説と比較し、北欧的な規模での国民高等学校の思想的意義を示す。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた出張等がコロナ禍の影響もあり実施できなかったため。また、資料整理のため雇用を予定していたアルバイトの都合がつかなくなったため。
|