2023 Fiscal Year Research-status Report
奄美群島の持続的社会を目指した高付加価値漁業生産への変革とイノベーション研究
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22K12571
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
鳥居 享司 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (70399103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江幡 恵吾 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (10325772)
河合 渓 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 教授 (60332897)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 漁業 / 資源管理 / 高付加価値生産 / マガキガイ / 奄美 / 奄美群島 / 持続的利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「限られた資源を有効活用する高付加価値生産へ変革させるための条件と課題を、経営的視点と新技術の導入によって明らかにすること」である。 それに基づき、2年目はマガキガイを題材に取り上げた。マガキガイは近年、地元住民だけではなく、観光客からも人気を博し、その取引価格は急上昇している。しかし、漁獲量は年々減少し、資源状態の悪化が懸念されている。漁業者は砂抜きなどの品質保持に努力する一方で、その持続的利用に向けたルールづくりが遅れをとっている。 こうしたことから、マガキガイを対象とする漁業権制度の設定状況、漁業権行使上のルール及び自主的ルールの有無と内容、漁獲量の推移、およびマガキガイの生態的特徴について研究を行った。 その結果、奄美群島域では、一地区を除いてマガキガイは漁業権の対象になっていること、漁業権行使規則による管理は行われていないこと、資源減少を懸念する一部の地域において資源管理の取り組みが芽生え始めたこと、漁獲量は2019年以降右肩下がりであることが判明した。また、資源管理の実施には生態的特徴の把握が不可欠であり、本年度の研究によって、年間の成長段階を明らかにすることができた。2024年度は、マガキガイの性成熟について明らかにする予定であり、科学的知見に基づく資源管理の実施と、その有効活用による持続的な高付加価値生産の実現を目指す。 また、地元水産物の島内消費促進にむけた方策についても、ヒアリング調査を継続している。2024年度は、再度、与論島において島内生産と大型宿泊施設の連携確立と漁業経営への経済的効果の解明について解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた島内生産と島内飲食・宿泊業者との連携問題については、順調にヒアリング調査を実施できており、研究は想定通り進展している。また、調査過程でマガキガイの高付加価値利用を妨げる要因として資源問題が浮上したことから、貝類の生態分析を専門領域とする研究分担者と協議しながら、本問題にも取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究目標は次のみっつである。 第1は、マガキガイの高付加価値利用の持続性を確保すべく、その資源管理方策を明らかにすることである。マガキガイの性成熟、移動、分布などの生態的特徴を解明し、その科学的根拠に基づいた資源管理方策を漁業関係者に提案する。それによってマガキガイの高付加価値利用の持続性に寄与する。 第2は、島内生産と島内飲食・宿泊業の連携による魚介類のブランド化と高付加価値生産の実現である。与論島を対象にした連携の取り組みを定着化させ、漁業経営への経済的効果を分析する。 第3は、奄美群島内の直売所の経営向上策の分析である。奄美群島では生産者直売の施設が複数あるが、いずれも経営が厳しい。生産者直売所での販売価格は漁業者に決定権があることから、従来までよりも高値での取り引きが期待されている。高付加価値生産への移行を念頭に置いた際、生産者直売所の存在は重要であることから、その経営向上に向けた方策を顧客分析に基づいて提案する。
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Causes of Carryover |
2024年度にマガキガイの詳細な生態分析を行う予定であり、それに費用が掛かる見込みであることから、2023年度は抑制的に研究費を使用した。繰り越し分については、奄美群島への旅費に充て、研究の促進を図る。
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