2022 Fiscal Year Research-status Report
産業集積におけるイノベーション・ネットワークに関する考察:二大タオル産地の事例
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22K12575
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
辻 智佐子 城西大学, 経営学部, 教授 (70383172)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域産業 / 産業集積 / イノベーション / タオル工業 / 今治 / 泉州 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、綿織物の産業集積を形成している愛媛県今治市周辺地域(今治タオル)と大阪府泉佐野市周辺地域(泉州タオル)の二大タオル産地を研究対象として、集積内の技術発展や商品開発などのイノベーションがどのような集積の効果から生じているのかを明らかにし、分業体制でモノづくりに取組む中小企業によるイノベーション・ネットワークについて歴史的変遷を踏まえながらその構造を明らかにすることが目的である。 上記の目的のもとで令和4年度は、今治と泉州の両タオル産地におけるヒアリング調査を行った。すでに終了している特許データベースを使った定量調査を踏まえ、統計分析では見えてこない部分について定性調査を現在実施している。令和4年度の具体的なヒアリング対象は、①特許データに出願はないが産地のイノベーター的存在の技術者や経営者、②特許等を一部取得している技術者や企業に対してであり、ヒアリング先の詳細については以下の「現在までの進捗状況」に記載している。ただ、ヒアリングを行う際にまずはその依頼のために訪問したヒアリング先もあり、これらの対象者については令和5年度に実質のヒアリングを行う。 質問事項は、主にa)属性、b)技術・商品開発の内容、c)技術・商品開発等の契機や経路、d)関係する企業内外の団体や制度、e)産業財産権制度を利用しない理由などである。②のヒアリングについての質問事項は、a)属性、b)技術・商品開発の内容、c)技術・商品開発等の契機や経路、d)関係する企業内外の団体や制度、e)産業財産権制度を利用するか否かの判断要因などである。ヒアリングはまだ途中段階であり今年度も継続予定であるが、イノベーションの創出経路と関わる産地のネットワーク構造における変容が時代の潮流とともに窺える。この点についてさらに洞察を加えていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の作業予定では、今治タオル工業に集中してヒアリングを行う予定であったが、泉州タオル工業も一部ヒアリングを実施した。両産地とも引き続きヒアリングを継続し、内容を深めていく必要がある。以下、ヒアリング先の詳細について記載しておく。 【令和4年9月8日から10日(今治タオル):今治市役所各関係部署、すまいるの会、株式会社武智商店】ヒアリングをスムーズに実施するにあたり、関係各所(今治市役所関係部署および「すまいるの会」)に挨拶とお礼のため訪問。次に、株式会社武智商店では創業者の武智スマ氏へのヒアリングを長時間にわたり実施。 【令和4年9月13日から15日(泉州タオル):大阪タオル工業組合、植助染色(株)、袋谷タオル(資)、泉州タオル館、佐野公民館図書室】定性分析のためのヒアリングを関係各所で実施した。同業者団体としての大阪タオル工業組合では専務理事の宮内純氏、仕上工程の重要な部分を担う染色加工業の植助染色(株)では長年染色加工部門の技術者として活動した北川晃三氏と井上和彦氏、製織工程を担うタオルメーカーの袋谷タオル合資会社では代表の袋谷謙治氏、専務の袋谷世津子氏にそれぞれヒアリングを実施。その他、直販店の視察、図書室にて資料収集を行った。 【令和5年1月21日から23日(今治タオル):越智源株式会社、株式会社オルネット、株式会社藤高、株式会社武智商店、有限会社グリーンメンテナンス、株式会社ヤスハラ、砂田撚糸株式会社、愛媛県繊維染色工業】タオル製造関連者へのヒアリングに際し、各社へ挨拶とお願いのため訪問。また、上記の砂田撚糸と武智商店についてはヒアリングを実施。
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Strategy for Future Research Activity |
両タオル産地における戦後から2000年頃を対象に、タオル工業を取り巻く時代背景を細かく調べ、時代によって産地のネットワーク構造がどのように変化したのか、その要因は何かなどについて考察していく。その成果は紀要論文などで公表していく予定である。 令和5年度も継続して両タオル産地におけるヒアリングを実施する。今のところ、研究計画の変更はない。
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Causes of Carryover |
ヒアリング先の都合により令和5年度に実施予定。
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