2022 Fiscal Year Research-status Report
「観光危機」概念の確立に向けた理論的枠組みの構築に関する知識社会学的研究
Project/Area Number |
22K12618
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
天野 景太 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30511349)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 観光危機 / 観光危機管理 / 観光公害 / SDGs / オーバーツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、①「観光危機」および「観光危機管理」に関する概念の構築、およびその作業の前提となる、②危機管理論およびリスク社会論に関する既往研究の収集とレビュー、③1990年以降より現在に至る日本における「観光危機」および「観光危機管理」に関する事例の収集、④持続可能な開発目標(SDGs)の現代日本における観光事業における取組みの事例収集とその体系的な整理、をおこなった。 ①および②に関しては、自然現象や政治・経済現象に対する「危険(リスク)」や「危機管理」に関する既往研究を参照しつつ、「観光危機」概念を「観光客や観光事業(観光の内部的環境)、あるいは観光現象をとりまく物理的環境や社会経済システム(観光の外部的環境)が、単一または複合的な要因により変動を来すことにより、観光や観光事業の実施や継続、あるいは観光現象をとりまく物理的環境や社会経済システムの持続に支障が出る状態に陥ること」と定義した上で、観光危機の生起要因、観光危機の解消過程としての観光危機管理のあり方について検討をおこなった。これらに基づき、主にCOVID-19がもたらしたパンデミックを例に、その特徴と生起要因、解決過程について、論考を展開した。 ③に関しては、主に②の作業に関連する事例に関して、全国紙の新聞に掲載された記事に関して網羅的に収集をおこなった。 ④に関しては、「観光危機」の解決過程に関連した国際目標としてのSDGsに注目し、現在の観光実戦におけるSDGsの導入視点に関して事例を収集、その実践主体および、ニューツーリズムの実践における展開可能性に関して検討した。 これらを通じて、本研究の目的である「『観光危機』のあり方を総合的・体系的に説明するための枠組みを構築する」ことに向けた基礎的な視点を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、主に、1990年代から現在に至る日本における「観光危機」の事例を、既存の研究論文および新聞記事(全国紙および主要地方紙)を対象として収集し、その内容を分析する作業を通じて、現代日本の観光危機事例に関するデータベースの作成。これらを通じて現代日本における観光に関連するネガティブな影響に関する多様性の様態を明らかにすることを目指した。事例の収集は、「観光危機」「観光危機管理」概念を構築するにあたり実施したものの、網羅的に事例を整理したデータベースの構築にまでは至っていない。この意味で、当初の計画通りに進展している、とまではいかないものの、「多様性を明らかにする」事に関しては、一定の成果を得たと判断できるため、「おおむね順調に進展している」ものと思量される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、過年度の研究と接続するかたちで、「観光危機」データベースの構築を中心に推進する予定である。その際、令和5年度に主に実施する予定としていた「観光危機」事例の詳細な分析、すなわち、危機因子、危機の受益・受苦主体、危機の種類(経済的、社会的、文化的、自然的)、危機の及ぶ範囲(個人・施設レベルから地域レベル、国土レベルまで)といった指標により分類・整理することについて、データベースの作成の過程において、同時並行的に作業を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の1200円は、当初計画通りの支出を行った上での剰余金であり、旅費の経費が当初見込み額よりも若干低く済んだことにより生じたものである。翌年度分として請求した助成金は、当初の計画通り、ソフトウェアやPC周辺機器、文献の購入、学会発表や資料収集に関連する旅費として使用する予定である。
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