2023 Fiscal Year Research-status Report
「伝道」された「西洋手芸」―明治前半期のキリスト教受容と手芸文化
Project/Area Number |
22K12643
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
山崎 明子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30571070)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ジェンダー / 手芸 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、明治中期以降女性に普及した西洋手芸文化が、明治初頭にいかなる状況で受容され、その伝達にキリスト教の女性宣教師やバイブルウーマンがどのようにかかわりを持ってきたのかを明らかにするものである。2023年度は近代のキリスト教受容と手芸普及に関する基礎調査として、以下の実績を挙げたい。 第一に、明治中期に神戸で宣教師の娘として育った女性の成育歴・教育歴等をまとめるとともに、当該教会でその内容について簡単な報告を行った。それに伴い、その女性が残した手芸品(主にレース編による家庭製品)を整理した。初期キリスト教に関わった女性たちが手芸活動を行ってきたことは史資料から把握できるものの、手芸品そのものが残る事例は少なく、貴重な資料調査となった。 第二に、前年度より継続して『地の塩』等の資料を読み続け、日本国内においてキリスト教をベースとした諸活動の在り方を概観することができた。その点については、今後の調査研究の基盤として大きな意義があったと考えられる。特にYWCAの活動には一定数の手芸活動が見られること、それらが余暇や奉仕という文脈に位置づけられていることが把握できた。 第三に、次年度集中的な調査を行う予定の施設に関して、その基盤となる基督教矯風会に関して、複数の先行研究にあたり、調査の前提作りを行った。次年度の調査を充実したものにするためであり、また本研究課題を確かなものにするための作業と位置付けている。特に、次年度の調査では、「授産」としての手芸研究に注目しており、内職等の概念とともに検討を始めている。 これらは必ずしも論文という形にはなっていないものの、それぞれ本課題研究にとって必須の研究作業と考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献収集と講読が中心であったが、基礎的な情報を読み取ることができたこと、また次年度の集中的な史資料調査に向けて準備ができたため、おおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、以下の調査研究を予定している。 第一に、近代日本のキリスト教と手芸を考察するうえで不可欠な「授産」に着目し、キリスト教婦人矯風会の施設に残る史資料の調査を行い、授産としての手芸と女性キリスト者の関係を検討する。第二に、首都圏に残る複数のキリスト教系女学校とその周辺地域における女性たちの活動を継続的に調査し、手芸活動の状況を分析する。 その他、必要に応じて現地調査を行うとともに、女性宣教師たちの文化的背景などの調査研究も継続して進める予定である。
|
Causes of Carryover |
前々年度までの科研費課題をコロナ禍により繰り越していたため、昨年度は2課題を並行して進めていたこと、その影響が続き次年度使用額が生じた。
|