2022 Fiscal Year Research-status Report
ケアの民主的配分実践に関する基礎的研究:保育をめぐる社会運動の横断的分析を通して
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22K12659
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
萩原 久美子 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (90537060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 労働運動 / 保育運動 / 専門職 / ケアの倫理 / 保母/保育士 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は市場の論理のオルタナティブとして構築されてきたフェミニスト政治理論、すなわちケアの倫理を土台として、公的保育制度をめぐって保育運動、労働運動、母親/女性運動として展開また個別に議論されてきた運動を、ケアリング・デモクラシーの実践として横断的に把握、分析することにある。その焦点は保育における「労働者」概念、処遇と社会的評価に密接にかかわる専門性、そしてこれらをめぐる各種運動の連携と分断の様相である。本年度の研究実績は以下である。 ①専門職の理論研究の整理 ②保育士/保育者の社会的経済的評価処遇の問題を「専門職」というフレーミングによって運動に結びつけた事例からアプローチした。1970年代初頭に浮上した国の中央福祉審議会による「社会福祉司制度試案」とそれに対抗して社協保母会が検討した「保育士法案」、両法案をめぐる労働者としてのロジックについて俯瞰した。 ③この議論を出発点として、子どもこそ手支援新制度下での保育労働力に関する政策的インプリケーションについて研究会で報告、論考を寄稿した。また、①②の作業を土台として2000年代初頭の国家資格化と市場化過程での脱「資格」による労働力確保について作業を進めた。その一部を報告するため、国際学会での報告にエントリーし、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に計画した研究の一部が、次年度の国際学会での報告に結びつけることができたことは大きな前進と言える。しかし、保育労働運動、保育運動、女性運動をある程度、俯瞰できるまでの史資料の検討がなしえたという段階には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、市場化過程と保育の担い手の再編について、国際学会での報告を行う予定である。同報告では特に市場に適合的な労働力の確保を目的とする保育者の資格代替政策に着目する。 第二に、引き続き、保育士/保育者をめぐる社会的経済的評価に対して「専門職」というフレーミングがどのような意味を持ったのかという点について検討を継続する。いわゆるプロフェッショナリズムと基づくアイデンティティと、労働者としてのアイデンティティとが運動面においてどのような分離をもたらしていくのか。この点を労働運動、保育運動、女性運動それぞれの動きと交差を念頭に整理していく。
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Causes of Carryover |
2023年度開催の国際学会での報告が決定したので、次年度の国際学会での報告準備及び出張関係旅費として留保することとした。よって、2023年度の国際学会での報告準備及び出張関係旅費として使用する。
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