2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K12663
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
梶本 亮一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (30391254)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パルス中性子源 / 非弾性中性子散乱 / フェルミチョッパー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パルス中性子源における非弾性中性子散乱実験装置のキーコンポーネントの一つである、フェルミチョッパーの理想的なスリットパッケージの開発に向けて、中性子の散乱体となる接着剤(水素)を含まないスリット材の開発を目指している。その基本的なアイデアは、スリットの透過材として用いられるアルミニウム板へ、接着剤の代わりに溶射という技術を用いて中性子遮蔽材のホウ素を貼付することである。 今年度は、まず、アルミニウム板へのホウ素の溶射が技術的に可能かどうかを検証した。フェルミチョッパーの実機で用いられるものと同サイズのアルミニウム板を用意し、そこに4種類の粒度の炭化ホウ素粉末を溶射し、得られた溶射体の密度を計測した。その結果、いずれもホウ素換算で50%以上の密度が得られたが、特にF320という粒度の炭化ホウ素粉末を溶射した場合にホウ素換算で59%の密度が得られた。現在、我々がJ-PARC物質・生命科学実験施設において中性子実験に使用しているフェルミチョッパーで使われているスリット材では、ホウ素密度は50%である。今回の溶射試験により、それを上回る密度が得られたため、溶射技術がフェルミチョッパーのスリット材作成として有望であることが分かった。 以上の結果は、国内研究会において、研究代表者が整備・運用している非弾性中性子散乱実験装置の現状を紹介する発表の一部として発表した。また、今年度開催された中性子国際会議 (International Conference on Neutron Scattering) に参加 (リモート参加) し、非弾性中性子散乱実験装置開発の最新情報の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では今年度にホウ素または炭化ホウ素の粉末とアルミニウム板を購入し、アルミニウム板へのホウ素溶射が技術的に可能か検証し、次年度にはその機械特性を検証する予定としていた。 しかし、これらの材料については、幸い、所属機関が有しているものを使用することができた。一方で、機械特性の検証には溶射の可否を確認する試験体を再利用することは出来ず、再度専用の試験体を製作する必要があることが判明し、次年度には当初見込んでいた予算より多くの予算が必要となることが分かった。 そこで、今年度の予算使用は学会での情報収集やデータの解析の準備となるソフトウェアの購入等、最低限のものに抑え、その分の予算を次年度に回すこととした。 以上のように予算使用計画の変更は必要となったものの、全体的な研究の進捗状況としては当初の計画から大きく遅れるものではなく、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の予定通り、炭化ホウ素のアルミ溶射体の強度試験を行う。 これまでの溶射試験で判明した最適粒度の炭化ホウ素粉末を用いて、膜厚を数種類変えた試験体を用意し、いわゆる「密着性試験」を行う。そのために試験体を作成する必要が生じたのは当初計画と異なるところであるが、予算計画の組み替えにより、対応可能である。 並行して、フェルミチョッパー実機に必要な強度を調査する。また、実機の製作に使われる、ホウ素の同位体10Bを使った10B4Cの粉末の入手についても調査する。
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Causes of Carryover |
当初計画では今年度に炭化ホウ素の粉末とアルミニウム板を購入する予定であったが、幸い、所属機関が有しているものを使用することができた。一方で、次年度予定している機械特性の検証には新たに専用の試験体を製作する必要があることが判明し、当初見込んでいた予算より多くの予算が必要となることが分かった。 そこで、今年度の予算使用を最低限のものに抑え、その分の予算を来年度に回すこととしたため、次年度使用額が発生した。 以上のように予算使用計画の変更は必要となったものの、全体的な研究の進捗状況としては当初の計画から大きく変更されるものではない。
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