2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K12664
|
Research Institution | Comprehensive Research Organization for Science and Society |
Principal Investigator |
青木 貞雄 一般財団法人総合科学研究機構, 総合科学研究センター, 主任研究員 (50016804)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 中性子 / 顕微鏡 / 結像 / ウオルターミラー / Ⅹ線 / 原子炉 / JRR-3 / 集光 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子はx線と同様にラジオグラフィーのプローブとして有用な役割を果たしているが、有効な結像素子が存在しなかったために、空間分解能は数十ミクロンにとどまっている。本研究では、結像型中性子顕微鏡の実現を目的として、原子力研究開発機構のJRR-3中性子実験施設CNRFビームラインで中性子顕微鏡光学システムを構築し、結像実験を行う。実験で用いる中性子の波長域は0.4~1.0nmで冷中性子と呼ばれている。この波長域では鏡面による中性子の全反射が利用できるので、非球面に加工された斜入射ミラーによる中性子結像が可能になる。顕微鏡光学系には、比較的収差の少ないウオルターミラー(回転楕円面と回転双曲面をタンデムに組み合わせたミラー)を採用する。実験で用いるウオルター型ミラーは波長0.15nmのx線に対して数ミクロンの空間分解能を有している。 中性子顕微鏡の光学系は、照明用の集光ミラーと拡大結像用の対物ミラーから成る。当該年度は照明用ミラーの結像集光特性を評価するために、中性子ビーム縮小像の撮影を行った。中性子の検出器にはイメージングプレートを用いた。原子炉の中性子源からミラーまでの距離はおよそ50m、ミラーから集光面までの距離は約20㎜なのでおよそ250分の1に縮小された中性子源の像が得られる。 中性子ビームの光軸は、円形開口を持つホウ素入りゴム板を入射位置に挿入して決めた。ウオルターミラの光軸合わせはあらかじめ可視光を用いて行い、中性子の集光像はイメージングプレートで撮影した。得られた集光像にタテ・ヨコの筋状パターンが見られたが、これはビームラインに配置されたコリメーターによるものと推定された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で構築する結像型中性子顕微鏡光学系の基本構成は、照明・対物ウオルターミラー、検出器となる。今年度は照明光学系に使用する集光用ウオルターミラーの中性子集光評価を行った。中性子ビームの光軸を定義するために、厚さ1㎝のホウ素入りゴム板に2㎝径の開口を空け、入射位置を決めた。ハッチ内後方にイメージングプレートを配置し、中性子ビーム投影像を撮影して光軸を決定した。ウオルターミラーの軸合わせは、可視光レーザーを用いて行った。可視光による集光位置を参考にし、イメージングプレートを光軸に沿って前後に移動させ、中性子ビームの集光像変化を調べた。集光点付近の1㎜前後でコントラストの良い中性子縮小像が得られた。縮小像にはタテ・ヨコの筋状構造が現れたが、その原因はウオルターミラーに起因するものではなく、ビームラインの反射リレー光学部品に依るものと推定された。また、集光像の外側にリング状のバックグラウンドが生じていたが、今回の実験では除去しきれなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
照明・対物ミラーと検出器を含む中性子顕微鏡光学システムの長さは約3mとなる。JRR-3CNRFビームラインの実験ハッチの長さは1m弱なので、ハッチ外に2m程度の光軸を延長する必要がある。幸い、ハッチの外側に4m程度のスペースが確保されており、施設側も延長の準備をしている。加えて、CMOS素子を搭載した中性子カメラの準備も進めており、実時間計測も可能になる。 照明ミラーと対物ミラーの組み合わせ光学系では、それぞれの開口数をマッチングさせる必要があり、その定量的な予備実験は可視光で行う。 中性子顕微鏡の結像性能評価のために試料として#100、#200のニッケルメッシュおよび#400、#640のSUSメッシュを準備した。#100はピッチ250ミクロンを表す。また、一般的な試料のひとつとして数10ミクロンのホウ素微粒子も準備した。
|
Causes of Carryover |
実験用に与えられたマシンタイムが予定より少なく、関連使用料金が少なかった。次年度はマシンタイムが大幅に増加するので、その使用料金等に充当する。 また、実験成果の報告として論文の投稿を予定しているので関連費用が生じる。
|