2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of X-ray detector using Superconducting Tunnel Junction with Silicon Pixel Absorber
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22K12676
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
志岐 成友 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50342796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超伝導検出器 / フォノン / X線検出器 / モンテカルロシミュレーション / 機器分析 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線吸収分光法は、着目する元素の吸収端近傍における吸収スペクトルを詳細に測定することにより、電子状態や結合距離などナノ構造を分析する手法である。XRD, XPS やEELS と異なり、特定元素周辺のナノ構造をバルク/表面・導体/絶縁体の状態を問わず分析できることが利点で、半導体・電極材料・触媒などの材料開発に欠かせない分析手段の一つである。特に部分蛍光収量法により特性X線を分離できれば微量元素も分析できる。 部分蛍光収量法によるX線吸収分光法の検出器には、感度、エネルギー分解能、計数率が優れていることが求められる。一般には半導体検出器が用いられるが、エネルギー分解能が100eV程度であるため、微量元素の分離検出は難しいことが多い。ここで超伝導トンネル接合(STJ: superconducting tunnel junction)検出器を用いると、15eV 程度の優れたエネルギー分解能、1 mm2 の大面積、1Mcps の高計数率により、元素ごとの特性X線を分離して超高感度分析が可能となる。 STJ検出器にシリコンピクセル吸収体(SPA: Silicon pixel absorber)を付与すると、X線吸収スペクトルが測定できる帯域を従来の 1 keV 以下から 15 keV 付近にまで拡大でき、分析できる元素が大幅に拡大する。しかし、SPAを有するSTJ検出器についての研究は、動作原理や最適な形状など、基礎的な部分についてさえ不十分であり、過去に試作されたSPA-STJ検出器のエネルギー分解能は半導体検出器と同等で、実用の一歩手前である。 そこで本研究は、SPA-STJ検出器のエネルギー分解能を向上させることを目的として、SPAの形状がエネルギー分解能に与える影響を、試作とシミュレーションの両面から研究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「SPA-STJ検出器において、SPAのフォノンの閉じ込め効率を上げ、STJ内に励起される準粒子数を増やせば、エネルギー分解能が改善するか?」という問いを掲げ、検出器の試作と、シミュレーションの両面から迫る。具体的な研究の内容は(1)検出器の試作と評価(2)モンテカルロ法を用いたフォノン伝搬ミュレーションの二点である。 (1)検出器の試作と評価 吸収体と基板をつなぐ梁の部分の断面積を減らした検出器チップを試作し、性能評価する予定であった。試作に利用を予定していたCRAVITY(現Qufab)の超伝導デバイス製造装置群の調子が悪く、試作が実施できなかった。このため、試作費は使用せず翌年度に繰り越した。過去に試作した検出器チップのうち、梁の断面積が小さいものをピックアップし、再評価を実施した。エネルギー分解能は悪いが、読み出しノイズは従来18eVであったものが、10eVにまで改善した。 (2 モンテカルロ法を用いたフォノン伝播シミュレーション 本年度は設備費を用いてシミュレーション用のコンピュータを導入する予定であった。実際に、多コアのCPUを有するコンピュータを購入し、シミュレーション実施環境を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
SPA-STJ検出器の試作と評価、およびモンテカルロ法を用いたフォノン伝搬ミュレーションを継続する。 従来STJ検出器の一画素の大きさは100ミクロン角程度が上限であった。昨年度、本課題とは独立な研究の中で、ゼロ磁場中で冷却することにより、検出器サイズを大きくしても問題が無いことが明らかになった。この結果を踏まえ、試作内容の中に、ピクセルサイズを大きくすることにより梁の断面積の相対的な割合を減らすことを含める。
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Causes of Carryover |
超伝導検出器の試作を予定していたが、依頼先のQufab(旧CRAVITY)の装置に不具合があり試作が実施できなかった。そのため試作を翌年度に行うこととし、費用も翌年度に繰り越した。
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Research Products
(1 results)