2023 Fiscal Year Research-status Report
建築における光の扱い方の、建築様式との関連に関する研究
Project/Area Number |
22K12690
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本間 睦朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (70617183)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光環境計画の様式 / 直接光と拡散光 / 有彩色光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光環境設計手法の変遷を、建築様式の変遷に照らし定量的な解析結果も交えて示すことを目的とする本研究において、23年度は欧州のロマネスク様式、ゴシック様式、モダニズム様式の宗教建築を中心として取材を行った。 石積みゆえに窓開口が小さく室内が薄暗いロマネスク様式において、窓開口からの昼光は印象的であり、さらに、エブラズマン形状の窓により直射日光の入射確率も増す(現地での窓の計測をもとにしたシミュレーションでも直射日光の入射確率が増すことを確認)。キリスト教の神学においては、光は重要な意味を有し、神の存在を知ることにつながる人間精神の象徴とされたとのことでもあるので、エブラズマン形状の窓により入射確率が増したこともあり、直射日光は神の存在を示すものとして、宗教建築において重用されたのではないかと考えた。 ゴシック様式では、建築構造の進歩による窓開口の拡大から空間内に昼光が入射しやすくなったとのことであったが、実際に内陣がゴシック様式で改修されていたヴェズレイのサント・マドレーヌ教会(身廊はロマネスク様式)の内部調査において、内陣の空間内の平均輝度が身廊の6~7倍程度であることを確認した。ロマネスク様式の暗い室内でこそ象徴性が表現できた窓からの直射日光は、ゴシック様式においてはステンドグラスを用いて有彩色光にすることで、明るくなった室内においても象徴性が維持できていることを確認した。内観の360度画像をもとにピクセル特性をCIE L*a*b*色度図にマッピングした結果からも内部の色使いが豊かであることが確認できる。 モダニズム期にはロンシャンの礼拝堂に代表されるように空間内を拡散光のみによる計画も見られるが、これは当時に広まった人工光源による影響も大きいと考える。 このように、光環境計画の様式の変遷は、直接光と拡散光の使い分けにあるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年のコロナ禍による遅れを、昨年度は他資金も活用して欧州の調査に出かけ、多くのデータを取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに宗教施設を中心に調査を重ねる。そのうえで、調査結果の画像などをもとにした因子分析を含めた印象評価を行い、空間の特徴を印象面と光の定量値の検証から紐解いていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
一昨年のコロナ禍により繰越金が生じていること、ならびに、昨年度の3月の海外調査出張の清算が今年度分に計上されるため。
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