2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on interface design to promote the acquisition of a novel human reading skill
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22K12704
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中島 誠 大分大学, 理工学部, 教授 (00253774)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 深い読み / ビジュアルシンキング / 順序記憶 / 見返し |
Outline of Annual Research Achievements |
R4年度は,計画どおりデジタルメディアでのビジュアルシンキングを行うユーザの行動分析を行い,タブレットでの「深い読み」を促す有効な操作を明らかにすることを目指した。そのために, 1)デジタルメディアとして電子書籍を対象にし,Webブラウザ上で稼働する電子書籍リーダに新しいブックマークツールを実装した。人の読むスキルの解明に向けて,順序記憶(例えば小説中でのエピソードの発出順序の記憶)が紙書籍より電子書籍の方が劣ることが電子書籍上でのユーザの読解力の低下につながっているという指摘をもとに,順序記憶を想起しやすい,見返しがし易い,ブックマークの表示方法をデザインし,プロトタイプツールを実装した。各ブックマークは,ユーザが,記録しておきたい部分のみを選択することで作成でき,ブックマークの一覧表示は,作成した時間順とそれが存在する書籍上での位置の2種類の時系列情報が分かり易いように表示するものとした。 2)補助金で購入したタブレットPCにプロトタイプシステムを導入して,ユーザスタディを実施した。大学生24名を対象に,紙で読むグループ,通常の電子書籍リーダで読むグループ,プロトタイプツールを実装した電子書籍リーダで読むグループの3つに分け,著作権フリーの短編小説を読んでもらったあとに,理解力を測る質問に答えて貰った。3つのグループは,あらかじめ読解力を測る事前テストに答えてもらったうえで,そのスコアの分散に有意な差がないように被験者を配置して用意した。結果的には,順序記憶の保持についての有意な効果は認められなかったが,普通の電子書籍リーダと比較して,読解力の事前スコアの低い人でも読後の理解力テストで高いスコアをあげるなど,プロトタイプツールの可能性を見ることができた。また,プロトタイプツールのデザインについては,ユーザビリティを評価するSUSスコアによれば,非常に優れていることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)おおむね順調に進展している。 当初の計画通りに,デジタルメディアでのビジュアルシンキング(今年度は,読書中のブックマーキングが相当)活動の観察を行えるプロトタイプツールを電子書籍リーダに実装でき,体系的なユーザステディも実施できた。プロトタイプツールでは,電子書籍の任意のページの任意の部分領域をブックマークできる仕組みを確立した。この機構の実現には,任意のウェブページの任意の部分領域をブックマークできる,先行研究の成果であるパーシャルブックマークの技術が活用できた。これらの機構の有効性を確認するユーザスタディにおいて,デジタル情報を扱うユーザの読みを支援するインタフェースデザインに関する新しい知見もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の研究成果は,R5年度中に国際会議で成果発表を行う予定で,投稿中であり,必要経費は補助金を利用する予定である。発表できない場合でも,その他の会議等で発表する。今後は, 1) タブレット上の電子書籍リーダ向け読書支援システムの構築:前年度での結果を踏まえて,深い読みのための情報獲得と理解への集中を阻害するインタフェース要素を排除して,ブックマークシステムの他,読解力を向上させるインタフェースデザインを勘案し,実現する。 2)深い読みに関するユーザスタディ:前年度行ったユーザスタディでの経験をもとに,より大規模なユーザスタディを設計・実施し,より詳細なユーザの行動分析を実施する。 3)深い読みの定義:深い読みのプロセスをビジュアルシンキングのプロセスとして検証し,改めて「深い読み」の定義を行い,当研究の最終目標でもある深い読みのためのスキルトランスフォーメーションに向けた準備を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度では,研究実績で利用したタブレットPCやPC用附属品の購入に物品費を利用し,さらに,ユーザスタディに協力してくれた被験者宛ての謝礼用に充てるクオカードも物品費で利用したが,予算上の端数が残った。また,当初予定していた成果発表について,より研究内容にマッチした国際会議(R5年度開催)を選んだため,その分の予算が残った。R5年度には,その余剰分は当該年度分と合わせて成果発表に利用する計画であり,また新たなユーザスタディ用のPCも計画どおり購入予定である。
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