2022 Fiscal Year Research-status Report
Examination of the excellent capacity of working memory in the visually impaired
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22K12748
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
喜多 伸一 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10224940)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワーキングメモリー / 視覚障害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,視覚障害者が日常生活で見せる記憶能力の卓越性の実験室実験で実証することである。視覚障害者の日常生活を見ると,事務作業,食事,料理,化粧など,手が届く範囲に多数の物品を並べて,それらの物品を適切に操作することにより,遂行されているものが多い。重要なことはその作業に必要な多数の物品を見ることができず,記憶に基づいて行っていることである。こういった日常現象は,視覚障害者のワーキングメモリー能力が晴眼者よりも優れていることを示唆する。 日常生活の観察から得られて仮説の実証に関し,2022年度は空間的ワーキングメモリーに関する心理学実験を行った。この実験では,12名の視覚障害者に対し,マトリクス・パターンを言語的に提示し,そのパターンに回転のような変換を加え,やはり言語的に回答してもらった。この実験に対する対象実験では晴眼者が同一の課題を行った。両者を比較すると,視覚障害者の成績が優位に高く,視覚障害者の記憶能力が晴眼者よりも優れていることが示された。 この実験は,聴覚や触覚など視覚障害者に有利な他感覚を用いていないこと,視覚障害者や晴眼者の日常生活とはかけ離れたのもでありどちらにも有利に働かないことといった,視覚障害者と晴眼者を対等に比較するための要件を見たしているので,本研究の目的に合致している。 しかしこの2つの実験は,新型コロナの影響もあり,実験参加者の年齢が十分に統制されておらず,公表には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では視覚障害者と晴眼者の記憶能力を対等に比較する実験を行う。2022年度はそのような実験手続きを考案し,実際の実験を行うことに成功した。対等な比較のためには,1) 視覚障害者は視覚以外の感覚モダリティに依存する度合いが高いので,空間情報を音像定位や聴覚で以外で提示する必要がある,2) 視覚障害者にも晴眼者にも有利に働かないようにするため,日常生活とは異なる中性的な課題を設定する必要がある,3) 視覚障害者が使い慣れている空間情報を避ける必要がある(具体的には,点字)。2022年度はそのような空間課題を開発し,ワーキングメモリーの計測を行い,視覚障害者と晴眼者の対等な比較に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実験は,実験参加者の人数も少なく,年齢の統制も取れていない。具体的には,視覚障害者の実験参加者は神戸市立盲学校の職員に限定され,年齢は30歳代から50歳代であったことに対し,晴眼者の被験者は大学生で,年齢は20歳内外であった。一般に,中性的な記憶課題は若年者が有利であり,それにもかかわらす実験結果は年齢が上の視覚障害者が好成績であったので,実験の方向性は正しいと言える。しかし対等な比較とは言えないので,年齢を統制した条件を設定し,データ数を増やす必要がある。
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Causes of Carryover |
2022年度は,研究代表者が共通し,類似目的の他の科学研究費である基盤研究(B)「歩行中の視覚障害者の外界知覚と地理知識」(2019年度から2021年度)が,新型コロナの影響で使用が限定されていて次年度使用をせざるを得なかったので,その科学研究費の次年度に当たる2022年度に使用した。それゆえ2022年度は本研究日からの使用額はゼロであった。
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