2022 Fiscal Year Research-status Report
超長期的な接触によって生じる単純接触効果:日常での接触頻度と実験室実験による検討
Project/Area Number |
22K12752
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
井上 和哉 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (50631967)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単純接触効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
単純接触効果とは,頻繁に接触したものに対して好意度が高まる現象である。単純接触効果のモデル化に関わる重要な特徴として,接触頻度と好意度の関係が逆U字型になる(過剰な接触が好意度を低下させる)という点がある。しかし,このようなパターンは短期間に過剰な接触を行うことにより,刺激に対して飽きや馴化が生じやすい実験室実験特有の結果である可能性がある。そこで本研究では,(1)日常での接触頻度と好意度との関係を検討するための研究手法を開発し,(2)日常での接触頻度と好意度の関係が逆U字型のパターンを描くのかを検討する。 こうした点を検討する方法として,著者らはすでに日常での接触頻度の効果を利用して,単純接触効果を検討する方法を提案し,その有効性を検証している。具体的には,日本語コーパスに含まれた仮名文字(ひらがな及びカタカナ)の出現頻度をカウントし,その対数値と実際の実験で得られた魅力値との間に中程度の相関があることを明らかにしている。しかし,以前のこの研究では,仮名文字の形態の効果を考慮していないため,今年度は仮名文字の形態の効果を統制したとしても,接触頻度の対数値と魅力度との間に正の相関(回帰係数)が見られるかを検討した。その結果,形態の主観評定値や物理的特徴値を重回帰分析の独立変数として投入したあとでも,接触頻度と魅力度との間に正の関係が見られ,単純接触効果が認められた。この結果は,本手法が日常での単純接触効果を測定するのに利用可能であることを示しており,今後は多様な刺激を利用し,結果の一般性や接触頻度と魅力度との関数関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日常での接触頻度の効果を検討する方法をすでに開発し,その妥当性・有効性は検討できたため,計画は順調に遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,接触頻度と魅力度との関係を詳細に検討するために,統計的なモデリングを必要とするため,今後は統計の専門家との共同も予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行により,学会や研究ミーティングの機会が減少したために,残額が生じた。新型コロナウィルス感染症は5類に移行したため,2023年度には学会での研究発表や対面のミーティングを増やす予定である。
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