2023 Fiscal Year Research-status Report
Biomechanical Approach to Reduce Invasion of Surgical Treatment of Pectus Excavatum
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22K12783
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
永竿 智久 香川大学, 医学部, 教授 (20245541)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 漏斗胸 / バイオメカニクス / 力学 / 胸郭 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸郭変形症は300人ないし500人に見られる頻度の高い疾患である。胸壁が心肺を圧迫し息切れや胸痛の原因になるので、手術による治療が必要である。手術においては、胸郭の陥没した部分を挙上した後に、矯正バーを用いて固定を行う。 成人患者に対する治療は難易度が高い。成人の胸郭は小児の胸郭より硬く、柔軟性に乏しいからである。したがって成人の胸郭変形症の患者に対して手術を行う場合には、一部の肋骨をあらかじめ切り、胸郭を柔軟にしておく必要がある。良好な結果を得るためには、どの肋骨を「ピンポイント」で切れば良いのかを判断しなくてはいけない。これを術前に予測するシステムを開発することを目的として本研究を施行している。手法としては、患者の胸郭を3次元力学モデルに変換したうえで、そのモデルを用いた手術シミュレーションを採用している。具体的には、切っておく骨のパターンをかえつつ、それに応じて胸郭の形態がどのように変化するかを観察し、有効な骨切り方法を見出す。2023年度には、胸骨が癒合している患者に対して手術を行う際に、いかなる骨切りを行えばよいのかについて究明した。過去に手術を行った患者90人を対象とする調査を行い、第2および第3にて胸骨の離断を行っていた場合、離断を行わない場合に比べて胸壁の挙上効果が10㎜程度向上することを解明した。この成果は査読付き英文誌 General Thoracic Cardiovascular Surgery (Springer社).の2024年1月号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2022年より2024年の3年間にわたり行う予定であり、2023年は研究の2年目にあたる。当初の計画では、2022年度はCTデータから胸郭のモデリングを行う技術を開発するところまで、2023年度はモデルを用いた構造解析計算により術後結果を予測し、手術に直接応用できる「法則」の解明に取り掛かる予定であった。この点、2023年には非対称症例において、どの部分を骨切りするかを解明し、以下の論文を発表した。Nagasao T, et, al., Separation of the seventh costal-sternal junction-A new technique to improve outcomes for the Nuss procedure for pectus excavatum J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2023 Jan;76:4-9. 2023年度はこうして知りえた「法則」が、実際の手術において成立することを、「胸骨を切除するか否か」という点に絞って確認した。胸骨の切離以外にも3つの論点(下記参照)について解明して行く必要はあるが、中間年度の進捗状況としてはほぼ予測通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
コンピューターモデルを用いた模擬手術により、現在までに3つの「法則」を発見している。第1の法則は、「胸骨を水平に離断することで効率的な胸壁の挙上が行われること」である。第2の法則は、「非対称性胸郭に対して手術を行う場合、凹みの強い側の胸郭の第2および第3肋骨を切離しておけば、胸郭挙上後に対称性が増す」ことである。第3の法則は、「非対称性の胸郭に対して手術を行うにあたり、胸骨を離断しておくと術後の疼痛が減る」である。このうち第1の法則については2023年度に臨床的に証明した。2024年度には再び臨床研究を行い、第2および第3の法則について解明する予定である。申請者の施設では毎年80人程度の患者に対して手術を施行しているので、過去5年間に400人程度のデータプールが存在する。これを解析して結果を出すことが、2024年度の目標である。
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Causes of Carryover |
本研究はコンピューターシミュレーションを用いた解析研究である。申請者は医学部所属であり、解析の専門家ではない。よって解析計算の際に問題が生じた場合には、株式会社JSOLに技術指導を有料で受ける計画を立てていた。しかし自主努力により解決し、一部については外注をする必要がなくなった。したがって外注費用を使用しないで済んだ。余剰となった費用は、研究成果を発表するためのサイト(「むねのかたち研究室」)の運営費用に充てる予定である。
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Remarks |
筆者が行っている手術方法および達成した学術成果について、動画を用いつつ一般の患者にわかるように作成したウェブサイトである。
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Research Products
(3 results)