2022 Fiscal Year Research-status Report
筋血管のメカニカルストレス応答の解明に基づく運動後の筋痛発症と適応機序の理解
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22K12792
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
片野坂 公明 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (50335006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (60432639)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遅発性筋痛 / 血管 / 運動適応 / メカニカルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋は、初めての運動に対しては筋痛を生じるが、運動を繰り返すことによって慣れを生じ、わずか2度目の運動において筋痛が緩和される(筋痛耐性)。しかし、この耐性を生じるメカニズムは不明である。これまで筋痛の主要因は筋損傷であると広く信じられてきたが、我々は、筋損傷や炎症がなくても筋痛が生じることを明らかにしてきた。さらに我々は膜損傷の修復タンパク質であるMG53が筋痛発症時の筋毛細血管に著しく集積することを発見し、『筋痛発症の起点となる主要因は筋血管傷害である』という仮説を提案するに至った。本研究では、まず運動後の筋血管における微細損傷の有無を明らかすることを第一の目標におき、さらに繰り返し運動後に筋血管の損傷が低下するかどうかを調べることでこの仮説の妥当性を調べ、運動時のメカニカルストレスに対する微小血管の応答と、筋の機能的適応機構を解明する。研究の初年度である今年度は、筋痛モデル動物作製装置を改良し、マウスでの筋痛発症の電気刺激条件の検討を行った。マウス後肢筋の支配神経に対する電気刺激強度を変えた運動の負荷により遅発性筋痛を生じさせた後、筋痛から回復した後の筋を採取して凍結切片を作成し、H-E染色による組織観察を行った。白血球の浸潤と中心核細胞(再生筋細胞)がみられるかどうかを指標に、炎症や組織損傷を示唆する組織変化の出現頻度を調べた結果、有意な組織損傷を生じずに筋痛を発症する運動刺激の条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった、筋痛モデル動物作成のための筋支配神経電気刺激パラメータ-設定を終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、膜修復タンパク質MG53とGFP(緑色蛍光タンパク質)の融合タンパク質を用いて筋の膜損傷を検出する実験系の構築を主体に実験を進める。まず、MG53-GFPを発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成し、ラットまたはマウス個体の筋に感染させることにより、筋でMG53-GFPを発現するマウスまたはラットを作成する。さらに血管内皮特異的Cre発現マウス(Chad5-Cre)に、Cre依存的遺伝子組換えによりMG53-GFPを発現することの可能なAAVを感染させ、血管にMG53-GFPを発現したマウス個体を作製する。これらのマウスを作成した後に、高強度の運動と過伸展を与えて筋を損傷させ、筋細胞および血管での蛍光の集積を評価して、損傷マーカーとしての有用性を検証する。これらのマウスを用いて、伸張性収縮運動による筋痛発症時に、血管壁および筋細胞MG53-GFPの集積レベルを定量化し、各組織における微細損傷の存在を検証する。
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Causes of Carryover |
支出を見込んでいた、筋痛動物作製装置の電気刺激パラメータ変更のためのプログラムの再設定(業者委託)をすることなく初年度の研究が終えられたこと、また遺伝子改変動物の施設導入とウイルスベクター作成を初年度に実施しなかったことが、使用額が少なかった理由である。次年度に、ウイルスベクター作成および遺伝子改変動物の導入のために使用する予定である。
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