2022 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患治療に向けたマイクロバブルと超音波による核酸搭載ナノ粒子送達法の開発
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22K12849
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小俣 大樹 帝京大学, 薬学部, 講師 (80803113)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロバブル / 超音波 / 血液脳関門 / 脳 / 神経変性疾患 / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経変性疾患治療に向けて、超音波応答性マイクロバブルと低強度集束超音波を用いて、核酸搭載ナノ粒子の移行を促進する低侵襲的核酸デリバリーシステムの構築を目指す。本年度は、マイクロバブルと超音波を用いたmRNA搭載脂質ナノ粒子の脳へのデリバリーについて検討した。まず、脂質組成の異なる3種類のルシフェラーゼ発現mRNA搭載脂質ナノ粒子 (mRNA-LNP) を調製した。マウスにmRNA-LNPとマイクロバブルを静脈内投与し、経頭蓋的に脳の右側に集束超音波を照射した。その結果、いずれのmRNA-LNPにおいても、左脳と比較して、超音波を照射した右脳で、高いルシフェラーゼ発現が認められた。また、イオン化脂質としてSM-102を使用したmRNA-LNPで最も高いルシフェラーゼ発現が得られた。さらに、血管内皮細胞のマーカーであるCD31を蛍光免疫染色し、蛍光標識したmRNA-LNPの脳内分布を共焦点顕微鏡で評価した。その結果、マイクロバブルと超音波を併用することで、血管内皮細胞からなる血管の外側にmRNA-LNPが存在していることを確認した。これらのことから、マイクロバブルと超音波を用いることでmRNA-LNPを脳実質へとデリバリーし、タンパク質発現を誘導できることが示唆された。次に、本デリバリーシステムの特性評価として、超音波の音圧 (0.4、0.6、0.8 MPa) の影響を検討した。その結果、音圧の上昇に伴い、ルシフェラーゼ発現が高くなることを確認した。また、脳の冠状切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色を行い、組織傷害性を検討した。いずれの音圧においても、左脳と超音波を照射した右脳で顕著な組織学的な変化は認められなかった。これらの結果から、超音波の音圧を調整することで、低侵襲的にmRNA-LNPの脳への送達効率を制御できることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、数種類のmRNA搭載脂質ナノ粒子 (mRNA-LNP) を調製し、マイクロバブルと超音波を用いた脳へのデリバリーについて評価した。その結果、mRNA-LNPの脂質組成によらず、マイクロバブルと超音波を用いることで、mRNA-LNPを脳へデリバリーできることを確認した。また、超音波の音圧のmRNA-LNPデリバリーおよび組織傷害性への影響を検討し、音圧の上昇に伴い高いタンパク質発現を得られること、および、組織傷害を誘導しないことを確認した。マイクロバブルと超音波を用いることで、低侵襲的にmRNA-LNPを脳へデリバリーできることを明らかにした。さらに、本デリバリーシステムの特性として音圧の影響を明らかにした。神経変性疾患治療に向けた核酸搭載脂質ナノ粒子送達のための基礎的な知見を得ることができた。そのため、本研究はおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
神経変性疾患治療におけるマイクロバブルと超音波を用いた核酸搭載ナノ粒子デリバリーシステムの有用性を明らかにするため、パーキンソン病治療効果の検討を行う。まず、6-ヒドロキシドパミンを脳内に投与し、ドーパミン作動性神経の変性を評価することで、パーキンソン病モデルマウスの作製方法を確立する。その後、パーキンソン病モデルマウスにおいて、マイクロバブルと超音波を用いたmRNA-LNPデリバリーについて検討する。また、神経細胞保護作用を持つタンパク質発現mRNA搭載脂質ナノ粒子を用いて、タンパク質発現を免疫染色により評価する。
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Causes of Carryover |
本年度は、核酸搭載脂質ナノ粒子のデリバリーに関する検討を中心に進めたため、パーキンソン病モデルマウスの作製を行わなかった。そのため、関連する実験動物や試薬の使用がなく、また、パーキンソン病モデルマウスの機能評価のための機器の購入を行わなかった。次年度に実験動物や試薬の購入を行う予定である。
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