2022 Fiscal Year Research-status Report
呼吸循環補助装置の安全性評価に有用な心臓血管内血流シミュレーターの開発
Project/Area Number |
22K12906
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
築谷 朋典 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00311449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西中 知博 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00256570)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 補助循環 / 補助人工心臓 / ECMO / 数値流体力学 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は呼吸循環補助装置の安全性評価に有用な心臓血管内血流シミュレーターを開発 し、呼吸循環不全患者に呼吸循環補助装置を装着する際の安全性を担保する方法等について医工学的観点から指針を提示することを目的としている。ECMO及び補助人工心臓による呼吸・循環補助を施行するために体内に挿入される管(カニューレ)を対象として研究を進める上で,数値流体力学ソフトウェア環境の構築を行い、臨床使用されているECMO用カニューレに関してその形状モデルを作製した。また、数値流体力学による数値計算によりカニューレの性能低下,キャビテーション発生を予測するための基礎データとして、模擬循環回路にECMO用カニューレを挿入して臨床 ECMO使用を模擬した条件で駆動した場合に、液体が流入するカニューレ先端あるいはサイドホールにおける流速・圧力分布の計測を行った。その結果、サイドホールを持つカニューレにおいては、流れは主に最もカニューレ先端から遠い孔から流入しており、先端付近ではサイドホールによってカニューレ内の圧力勾配が消失し、外部から流入する液体の流量はほとんどなくなっていることが示された。弾力の大きな静脈に長いカニューレが挿入されている状況では、血管壁に対するカニューレの位置関係が外力に敏感であり、解析を行うにあたっては多くの仮定を設ける必要があることが明らかとなった。また、カニューレの挿入された心室モデルあるいは血管モデルの表面における流れの向きを明瞭に表示することができるトレーサ法の効果について検討を行い、パール粉を混入した液体を循環させることによって複雑な流れの巨視的な観察が可能であった。補助人工心臓内部の観察によってポンプ外部での流れの剥離が観察でき、数値計算結果の妥当性検証にも活かすことが出来る可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
数値流体力学による数値計算による研究において、血液におけるキャビテーション発生を正しくとらえることができるキャビテーションモデルの存在が重要となるが、現状利用可能なモデルを基に、最適なモデルを確立するための基礎的なデータに関する検討が必要であることから、各種調査、カニューレを用いた実験的な検討からモデルの確立を進めるための研究に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、数値計算ではより患者の血管形態に近いモデルを製作し、臨床の現場で起こっている脱血不良の状態を再現することによってキャビテーションなどの不具合発生限界の判定を検討できる計算モデルを作る。また,カニューレ流れに関して実体モデルを用いた検討によって研究を進める。大型動物の医用画像に基づいて製作された内部が観察可能な透明弾性モデルを用いてECMO、補助人工心臓を想定したカニューレ周囲の流れの観察を行い、カニューレへの流入状況に対して血管形状や呼吸循環補助装置の運転条件が与える影響を明らかにする。それらの結果に基づいて装置の性能低下が発生するための条件を予測する方法を確立する。
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Causes of Carryover |
本年度は数値流体力学による数値計算を中心に検討を行い、次年度使用額が発生した。大型動物の医用画像に基づいて製作する内部が観察可能な透明弾性モデルのデザインを確定し、その製作とこれを用いた研究などにおいて計画的な予算の執行を行う予定である。
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