2023 Fiscal Year Research-status Report
コミュニケーションにおける暴力の分析:共同行為論の応用
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22K12960
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 那由他 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 講師 (40727088)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 共同行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年次では、ステップ②「集団レベルの心理の形成における参加者間の力関係の影響を分析する」を遂行する予定となっていたが、実際にはこの課題はステップ①「共同行為におる参加者間の力関係の影響を分析する」と大きく変わらず扱うことができるとわかったため、ステップ③「共同性基盤意味論を介して、②をコミュニケーションに応用する」に取り掛かってた。 前年次の研究成果より、共同行為の参加者が共同行為開始前にあらかじめ持つ意図や目的やコミットメントが、その共同行為がいかなるものであるかを決定するわけではないということがわかっている。それゆえに、共同行為はむしろ参加者間が行為開始後にどのように行為の方向性を調整し、擦り合わせるかによって決定されるのであり、そこに参加者間の力関係が反映される余地がある、というのが前年次の研究からわかったことだった。 三木(2019)『話し手の意味の心理性と公共性』で提示した共同性基盤意味論とこの成果を結びつけるために、本年次ではコミットメントの概念を整理し、コミュニケーションにおける発話が同時にもたらす複数のコミットメントを区別しようとした。その成果は「コミットメントの意義と種別」(KLS Selected Papers 5: 143-158)にある。これを介して共同性基盤意味論と前年次の成果を具体的に結びつけることで、発話が複数のコミットメントを同時にもたらし、そのいずれにおいても発話がなされたあとの話し手と聞き手の擦り合わせのもとで調整されるというモデルを構築した。この成果はMiki(2024) "Mansplaining as Appropriation of Meaning"(Philosophia OSAKA, 19: 13-26)で公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要でも述べたように、当初の予定では一年次必要だと思われた課題が実際に取り掛かってみたところそれほどの期間を要していないとわかり、課題を繰り上げて遂行している。結果的に当初の計画より進展は早まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ステップ③「共同性基盤意味論を介して、②をコミュニケーションに応用する」、ステップ④「ステップ③の成果をもとに、コミュニケーションにおける暴力の生成を類型化する」に取り組む。特に、すでに論文でも取り上げたマンスプレイニングの事例が、この計画を遂行するうえで各種の理論の相互作用が見て取りやすい優れたモデルケースになると考えており、しばらくはこの例を主軸に分析を続けたい。
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Causes of Carryover |
学会をいくつか体調不良等で見送ったため、予定より使用額が少なくなった。これに関しては次年度の学会参加費や資料購入費にあてたい。
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